症状と漢方処方 冷え性①
年間を通じて冷たいものを食べる食生活や、夏を冷房によって冷やしすぎる習慣などから、体を温める力が弱い陽虚の人が増えています
夜型の生活も血虚になりやすく、これも冷えの原因となります
基本的には温める治療を行いますが、温めても改善しない場合は、精神的な問題によって気の巡りが悪くなったことによる冷えが考えられます
体質からみる陽虚による冷え性
発汗により冷えの悪循環が起きやすい
処方:桂枝加附湯 中1功/八味地黄丸
温める力が足りない
冷えのいちばんシンプルな形は、温める力が弱い陽虚です
冷えているのに汗が出やすく、汗によって熱が逃げてさらに冷えるという悪循環が起こります
着替えるときに寒い、ちょっとした寒さでかぜをひいてしまうといった、体表だけが冷えている比較的軽い段階の冷えから、体の芯まですすんだ冷えまで段階があり、それによって処方が変わります
体を温める処方を
体表の冷えは、体を温める力のある附子や桂皮が配合された桂枝加朮附湯が用いられます
配合されている蒼朮には、じっとりした汗を止める働きがあります
冷えがすすんでいる場合は、腎を補う作用のある、陽虚の代表治療薬である八味地黄丸が用いられます
この生薬にも附子が配合されています
体質からみる血虚による冷え性
手足の先が冷え皮膚も乾燥しがちに
処方:当帰四逆加呉茱萸生姜湯
冬にしもやけができやすい
血虚によって血流が悪くなると、血脈中に寒邪がとどまり手足を冷やします
寒さによって手足にしもやけができるのは、このタイプの冷え性です
皮膚も乾燥しがちになります
冷えによる体へのダメージは少ないのですが、病態がすすむと月経痛や月経不順などのトラブルが出てきます
陽虚と血虚の両方をもっている人も多く、血虚が悪化すると陽虚になりやすくなります
血を補いながら温める
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、配合されている当帰や白芍薬で血を補い、細辛で温めます
ほかに呉茱萸、生姜も温める力がある生薬です
血虚を改善しながら、温めることでより冷えを改善する効果があがります
女性にみられる血虚の症状にも、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は用いられ、冷えによる月経痛を改善します
症状と漢方処方 冷え性②
体質からみる気滞による冷え性
精神面が原因で手足が冷える
処方:四逆散
緊張しやすい人の冷え
いくら温めても冷えが改善しない場合、精神症状から冷えが起きている可能性があります
緊張しやすく、イライラしがちで、暑がりで薄着なのに手は冷えているといったタイプです
体の内面は冷えていないのに、緊張から気血の巡りが悪くなって、手足の表面に冷えが生じます
冷えの治療はいらない
心底冷えているタイプではないので、温める治療は必要ありません
まず体の冷えの原因が、緊張などの精神症状であることを自覚することが大切です
そして緊張をとり、気血の巡りをよくする治療をします
四逆散は配合されている柴胡が緊張をとる働きをします
さらに気を巡らせる作用のある枳実も、気の流れをよくする効果があります
体質からみる水毒による冷え性
体に滞る水による冷えとむくみ
処方:真武湯/当帰芍薬散
陽虚になると水毒になりやすい
水の巡りが悪くなり、体に水が停滞して起こる冷え性です
もともと陽虚がある人は水毒になりやすいため、両方をあわせもっている人もいます
冷えの症状を改善するためにせっせと温めてもなかなか改善しないこのタイプは、むくみをとることで冷えの改善がみられます
水毒と陽虚の人は真武湯
水毒による冷えには、真武湯を用います
配合されている附子で温め、茯苓と蒼朮で水を流して巡りをよくします
水毒と陽虚のある人は温めながらむくみをとるのが効果的です
水毒に血虚がともなうケースもあります
この場合は当帰芍薬散が処方されます
当帰と芍薬で血を補い、茯苓と沢瀉で水毒を改善します
養生・セルフケア
過ごし方
陽虚の人は、冬に冷えがすすんでしまうので、夏のうちから冷えないように過ごしましょう
漢方では太陽をエネルギーととらえ、夏に太陽を浴びることで元気になると考えます
冷房のきいた室内で心地よい涼しさばかりを求めずに、多少暑くても日光を浴びて陽を補うことが必要です
夏に熱量を補うことなく、秋・冬に突入するのはNGです
また、冬に寒さに負けて、かぜばかりひいていると、ますます陽虚はすすみます
冬は体を守りながら、無理をしないで過ごすことが大切です
夜に活動することも体を冷えやすくします
血虚にもなりやすくなるので、血虚による冷え性の人は、夜は早く寝るように心がけましょう
食べもの
中国では暑い季節でも、氷を入れた飲みものなど、冷たいものはあまり飲む習慣がありません
冬でもつめたいものを好む人が増えていますが、陽虚の人はどんどん体が冷えやすくなり、むくみやすくもなるので注意しましょう
体を温める作用の強い羊肉や、ネギ、ニラ、ニンニク、ショウガ、トウガラシなど、体を温める食材を積極的に食生活にとり入れましょう
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
(この記事は、ラブすぽの記事で作りました)
漢方などでは、陽と陰、気や水の巡りを重視します
陽と陰のバランスを考え、その人に合った体質で治療します
また気の巡り、水の巡りが悪かったら改善します
適度の水分補給は重要ですが、水分の停滞などの水毒も注意
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その人個人の「体質」に合わせ治療する漢方
心身一体の医学
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2024年12月28日
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