2024年12月07日

日本人が意外と知らない「日本人の起源」をめぐる「神話」の真実

神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇・・・
私たち日本人は、「戦前の日本」を知る上で重要なこれらの言葉を、どこまで理解できているでしょうか?

右派は「美しい国」だと誇り、左派は「暗黒の時代」として恐れる
さまざまな見方がされる「戦前日本」の本当の姿を理解することは、日本人に必須の教養と言えます

歴史研究者・辻田真佐憲氏が、「戦前とは何だったのか?」をわかりやすく解説します

※本記事は辻田真佐憲『「戦前」の正体』(講談社現代新書、2023年)から抜粋・編集したものです


関心が高まる神武天皇

これにくらべるとあまり知られていないものの、2022(令和4)年3月には、古屋圭司衆院議員が「神武天皇と今上天皇は全く同じY染色体であることが、『ニュートン誌』染色体科学の点でも立証されている」とツイッターで発信して一部で話題になった

あたりまえながら、染色体は実在の人物にしかないので、これは神武天皇の実在を前提としていることになる(そもそも科学雑誌『Newton』は同趣旨の論文掲載を否定している)

いや、天皇だって祖先をたどっていけば誰かにたどりつくのだから、そのひとりが神武天皇だという反論もあるかもしれない

だが、縄文時代や弥生時代、どこかの竪穴住居に住んでいた人物Xはただの人物Xなのであって、八紘一宇の理念を唱えたとされる神武天皇とイコールではない
モデルとなった人物が仮にいたところで結論は同じだ
なんともずさんだが、この手の実在論は根強く存在する

政治家の発言に限らず、近年、神武天皇にじわじわと関心が高まっている
国立国会図書館のデータベースで検索すると、神武天皇と冠した本は、2010年以降で60件ヒットする
1980年代は8件、90年代は12件、2000年代で17件にすぎないにもかかわらず、だ

また令和に入ってからだけで、神武天皇像が岡山県笠岡市に、神武天皇の記念碑が三重県熊野市に、それぞれひとつずつ建てられている
ゆかりのある神社で、神武天皇の顔ハメパネルにまで出くわすこともある
戦前のひとがみたら、驚嘆するしかないだろう

スピリチュアル化する神武天皇

神武天皇はときにスピリチュアルな文脈でも顔を出す

安倍昭恵夫人は、安倍元首相銃撃事件を受けて「神武天皇にゆかりのある奈良の大和西大寺で(引用者註、安倍元首相が)亡くなったんだから、それが意味することがすべてなの。そういう運命にあったのよ」と述べているといわれる(加藤康子「幼馴染が語る総理と母、洋子さん」『月刊Hanada』2022年11月号)

神武天皇に注目するのが悪いといいたいのではない
神話や日本人のルーツに関心をもつことは、けっして責められるべきことではない
憲法などにそこで示された理念を盛り込むことも、内容によってはかまわないだろう

ただ、われわれが神話をよく知らないことをいいことに、政府や与党に手垢にまみれた八紘一宇を唱えだされても困ってしまう
かえって神話をないがしろにするような、いい加減な神武天皇実在論の横行も困りものだ

現在でも、建国記念の日や日本サッカー協会(JFA)のマークなどは神武天皇と関係している。その記念碑や史跡が地域振興に用いられている例も少なくない。2020(令和2)年11月、JRの宮崎駅が神話にもとづいて、西口を高千穂口、東口を大和口と改称したことをどれくらいのひとが知っているだろうか。

日常の延長線上にあるからこそ、神話を神聖不可侵にせず、かといって毛嫌いしない
いま、それぐらいの適度な距離感が求められているのではないか

(この記事は、現代ビジネスの記事で作りました)

私の私見をいえば、即位が紀元前660年2月11日、年齢が100歳を超えて死亡とされる初代天皇の神武天皇

科学的にいえばその実在は疑問だ



「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史 (講談社現代新書 2705) 新書

戦前の真の姿をあぶりだす
日本人のルーツをさぐる
posted by june at 12:23| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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