家族でのレジャーや学校の遠足、移動教室などで自然の中に行ったとき、ハチやヘビなどの生き物に遭遇する可能性がある
刺されたり噛まれたりしないようにするのが一番だが、万が一攻撃された場合はどうしたらいいのだろうか
そんな身近な危険から身を守るための知識が楽しく学べる書籍、『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(ダイヤモンド社)が刊行された
本書の監修者のひとりで医師の西竜一先生に、「身近な危険生物に襲われたときの対処法」について聞いた(取材・構成 / 小川晶子)
● ハチに2回刺されたら「アナフィラキシー」になる?
――今年7月、遠足に行った保育園児9名がクロスズメバチに刺されて病院に搬送されたというニュースがありました。遠足等で森林に行くときはもちろんですが、私の住んでいるところは身近にスズメバチがけっこういるので気を付けなければと思っています。ハチに刺されて、もっとも怖いのはアナフィラキシーですよね?
西竜一先生(以下、西):そうです。重篤なアレルギー反応が「アナフィキラシー」で、食事でも起こりますが、ハチに刺された場合も起こります
――どんな症状が出るのですか?
西:蕁麻疹がでたり、呼吸が苦しくなったり、ヒューヒューと音が鳴ったりします。身体の様々な部分に炎症が起きて血管が開いてむくむわけですが、皮膚の血管が開けば蕁麻疹、口に近い上気道がむくむと窒息状態になり呼吸ができなくなりますし、より末梢の気管支なら喘息のような症状になります。全身の血管が開けば、血圧が下がってひどい場合は意識がなくなります。最悪な場合は心臓が停止します。
――怖いです・・・。ハチに刺されて、呼吸が苦しくなったらすぐに病院ですね。
西:呼吸が苦しい、意識が遠のくような症状の場合はすぐに救急車を呼んでください。ちなみに、アナフィラキシーは、アレルゲンがどういう経路で入って来たかによって発症(最悪の場合心停止)までの時間が変わります。食事の場合は30分程度かけて消化吸収されますが、ハチ毒の場合は皮膚からジワジワ広がるので15分くらいでしょう。静脈注射のように直接血液に入れれば数分です。
――『いのちをまもる図鑑』にもある通り、ハチに刺されたことがあって、抗体ができたあとに再びハチに刺されると、アナフィラキシーを起こすおそれがあるということですよね。ということは、刺されたのが2回目なら病院に行くべきですか?
西:2回目に必ずなるわけではないですよ。ハチに刺されたのが2回目だからと救急車を呼ぶ人もいるのですが、刺された部位の痛みだけで、他に何も症状が出ていなければ問題はありません。アレルギーですから、人によっていつ出るかはわからないんです。花粉症も同じですよね。
――2回目以降は毎回クジを引くようなものか・・・。刺されないようにするのが一番ですね。
● ニホンマムシに噛まれたら「近くの病院」に行く
――東京でもニホンマムシのような毒ヘビに遭遇したという話はときどき聞きます。毒ヘビに噛まれたときは、どうしたらいいですか?
西:ニホンマムシはチクっと噛んで去っていき、急激に大きな症状が出るわけではありません。でも、激しく腫れて、さらには血管や筋肉を溶かす毒を持っているので適切に処置をする必要があります。日本では毎年2000~3000人が噛まれ、そのうち10人ほどが亡くなっています。もし噛まれたら、あわてずに傷口を水で洗い流してください。そして、近くの病院に行くことです。
――毒ヘビは、生息地に近い病院でないと治療薬の準備がない場合があるということですよね?
西:そうです。地域特性のあるものは、その地域の人がよくわかっていますから。
病院に行くときは、走らないように気を付けてください。心臓がドキドキすると毒の回りが早くなってしまうんです。
● 毒は吸い出さなくていい
――なるほど、それは怖いですね。毒を口で吸い出してペッペッと出すみたいなのを漫画で見たことがありますが、それはダメですか?
西:おすすめしません。毒を吸い出す効果はあまり認められていませんし、口の傷から毒が入ったり、口の中の菌が傷から入ってしまうかもしれません。その場での処置としては傷口を水で洗うだけで良いでしょう。
――毒のある生き物に遭遇したら焦ってしまいそうですが、落ち着いて行動できるように知識を持っておきたいと思います。
西竜一(にし・りゅういち)
医師
公衆衛生学修士
救急科専門医
南町田病院救急科勤務
帝京大学医学部救急医学講座非常勤講師
帝京大学医学部卒業
救急医として日々あらゆる病気やケガの診察をし、災害時には被災地において医療活動を行う
救急・災害医療の知識を市民へわかりやすく伝える活動も行っている
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』(監修:池上彰、今泉忠明、国崎信江、西竜一 文:滝乃みわこ イラスト:五月女ケイ子、室木おすし マンガ:横山了一)に関連した書き下ろし記事です
(この記事は、DIAMOND onlineの記事で作りました)
身近には大きな危険が潜んでいる
夏休み中の危険もそうだが、夏休みが終わって秋イなってもレジャーで危険に遭遇する場合も
そうした場合、正しい応急処置が必要になる
いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル 単行本(ソフトカバー)
身近には危険がいっぱいだ
ハチに刺されたら、毒ヘビにかまれたら、クマに遭遇したら、目の前で溺れている人がいたら・・・など
ピンチでの対処法、応急処置を解説
2024年09月22日
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