2024年06月30日

性染色体の「Y」が男性からなくなると心不全死のリスクが1.8倍増加に・・・

性別の決定に関わる情報を持つ性染色体にはX型とY型の2種類があり、「XY」のペアで男性、「XX」で女性になる
しかし、最新の研究では男性だけが持つ「Y」染色体が消失しつつあるのだという
もし完全に失くなったら、いったいどうなってしまうのか

『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』(朝日新聞出版)より、一部抜粋、再構成してお届けする

あなたの身体でも消えはじめた「Y」
最近の研究から、ヒトの進化といった大きなスケールではなく、実際に男性の身体中の細胞から、すでにY染色体が消失し始めていることがわかっています

一般的な男性の細胞の中には、X染色体1本とY染色体1本を含む、合計46本の染色体が存在しているはずです

しかし、これらの細胞からY染色体が失われ、性染色体がX染色体1本のみの45本となる現象があり、「モザイクY染色体喪失」とよばれています

この現象について、国内では、国立成育医療研究センターの深見真紀博士らの研究グループにより、精力的に臨床研究が進められています

「モザイクY染色体喪失」は、もともとは男性の老化現象のひとつと考えられていました

若い頃の細胞はY染色体を保持していますが、加齢とともにY染色体が抜け落ちていき、70歳以上の一般男性のうちの1割以上は、Y染色体が消失した細胞をもつ、といわれています

血液中の細胞を調べた研究報告では、70代の男性ではおよそ30%の血液細胞でY染色体が失われているのに対し、80代の男性だと約50%、80ー90代だと約90%にもなり、ほとんどの細胞でY染色体が失われていることがわかっています

この現象が発見された当初は、高齢男性に限った現象であると考えられていました
しかし、研究が進むにつれ、そうではないということがわかってきたのです

深見博士らの研究グループは、モザイクY染色体喪失が胎児期や小児期、青年期など、様々な年代でも起きていることを報告しています

また、喫煙によりY染色体の喪失頻度が増加することも知られており、何らかの環境要因が直接的に細胞に影響してY染色体が失われるのではないか、とも考えられています

「Y」消失は疾患リスクを高める
Y染色体をもたない細胞が増えると、男性にどのような影響があるのでしょうか?

細胞からY染色体が失われると、寿命が短くなる、アルツハイマー病や自己免疫疾患、がんなどの疾患リスクが増加する、といった研究報告があります

Y染色体が失われるとなぜこれらの病気が発症するのか、具体的な因果関係はわかっていませんが、Y染色体上の遺伝子が失われることで、免疫機能が異常となり病気となる可能性が示唆されています

Y染色体喪失は心臓病のリスクを高める、という実験動物を使った研究もあります

大阪公立大学(現在は国立循環器病研究センター)の佐野宗一博士は、スウェーデンのウプサラ大学、アメリカのバージニア大学との国際共同研究により、人工的に標的遺伝子を壊すことができる遺伝子改変技術と骨髄移植技術を用いて、Y染色体が除去された造血幹細胞(血液のもとになる細胞)をもつY染色体喪失マウスをつくることに成功しました

Y染色体喪失マウスは、野生型のマウスに比べて短命で、心臓、肺、腎臓などの臓器の線維化(線維成分が蓄積し臓器が硬くなること)が起こりやすく、さらに、心不全の予後が悪いこともわかりました

そこで、Y染色体が除去された細胞をさらに詳しく調べたところ、マクロファージとよばれる白血球が、Y染色体がないと線維化を引き起こす物質を多く産生し、線維化の促進や心不全悪化の原因となることが示されたのです

さらに研究チームは、ヒトの調査からも、Y染色体喪失により男性の心不全死のリスクが1.8倍も増加することを明らかにしています

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黒岩麻里(くろいわ あさと)

京都府生まれ
北海道大学大学院理学研究院生物科学部門教授
11997年、名古屋大学農学部卒業
2002年、同大学院生命農学研究科応用分子生命科学専攻にて博士号取得
日本学術振興会特別研究員、北海道大学先端科学技術共同研究センター講師、同大大学院理学研究院准教授を経て16年より現職
専門は生殖発生学・分子細胞遺伝学で、哺乳類、鳥類を対象に、性染色体の進化や性決定の分子メカニズムの解明を目指す
NHK「あさイチ」や「ヒューマニエンス40億年のたくらみ」「又吉直樹のヘウレーカ!」などメディアにも出演し、「性決定」についての最新の知見を一般に向け積極的に伝えている
受賞歴は、11年に「哺乳類および鳥類における性染色体と性決定機構の進化研究」で第62回染色体学会賞、13年に25染色体をもたない哺乳類種の性染色体進化の研究」で平成25年度文部科学大臣表彰若手科学者賞、23年に北海道大学が次世代の女性教員を顕彰する桂田芳枝賞など
著書に『消えゆくY染色体と男たちの運命――オトコの生物学』(学研メディカル秀潤社)、『男の弱まり――消えゆくY染色体の運命』(ポプラ新書)がある
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(この記事は、集英社オンラインの記事で作り

男性の性別を決めるY染色体がなくなる「モザイクY染色体」・・・

この現象が増えているようです

これによって心不全などのさまざまなリスクがあるようです

この現象は巷でいわれることもある「男性の弱体化」などとも関係があるのでしょうか

今後の研究の進展や原因の解明にも注目



「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実 単行本

男性からY染色体がなくなる悲劇
この現象が増えているという
この悲劇を通じ、性に対する概念・考え方・常識などを改めて考え直す
現代はさまざまな多様性が容認されている
posted by june at 04:10| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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