2024年03月04日

世界の七不思議「オリンピアのゼウス像」とは、神々の原型となった金と象牙の巨大座像

右手に勝利の女神ニケを載せ、左手には杖 ナポレオンやジョージ・ワシントンにも影響

古代ギリシャの都市国家エリスに位置するオリンピアの聖域には、ゼウス神殿があり、かつては金の衣をまとった巨大なゼウス像が祭られていた
ゼウス像は壮麗な玉座に腰かけていたにもかかわらず、高さは約12メートルもあったという
紀元前1世紀の地理学者ストラボンは、「ゼウスが立ち上がれば、頭が神殿の屋根を突き抜けてしまうほどの大きさ」だと記している

職人の技は驚くほど精緻で、複雑な彫刻や装飾が施され、目には貴重な宝石が使われていた
この像は紀元前225年には、ビザンティウムの数学者フィロンやシドンの作家アンティパトロスなどにより、「世界の七不思議」の1つと呼ばれていた
この七不思議のリストには、他にはギザの大ピラミッド、バビロンの空中庭園、アレクサンドリアの大灯台、マウソロス霊廟などが挙げられていた

オリンピック発祥の地
ゼウス像が建設されるよりもずっと前の紀元前776年、オリンピアで最高神ゼウスに奉納するための競技会が始まった
古代オリンピックだ
以来4年に1度ずつ、ギリシャ全土の都市国家から競技者と観客がオリンピアに集まるようになり、戦争中の国々も戦いを休止し、平和的な競技によって神々を称えた

やがて、エリスと、隣接する都市国家ピサとがオリンピックの開催権をめぐって互いに激しく争うようになった
だが、エリスは紀元前464年にピサを滅ぼして開催権を確保し、戦利品を使ってゼウスを祭る壮大な神殿の建設に着手する

神殿の建設を任されたのは地元の建築家リボンだった
彼が建てた巨大なドーリア式神殿の正面には6本、側面には13本の円柱が並んでいた
中央の身廊(入り口から祭壇前までの中央部分)を取り囲むように2階があり、正面扉の両側から階段で上ることができた

ギリシャの神話や伝承の人物を描いた見事な彫刻が神殿を飾っていた
その多くは現存し、アテネの国立考古学博物館に展示されている
しかし、一番の傑作は神殿の内部にあった

天才彫刻家
ゼウス像の制作を依頼されたのは、当時ギリシャ全土に名声をとどろかせていた芸術家で建築家のフェイディアスだった

フェイディアスは、木製の彫像の表面に滑らかな象牙と輝く金を貼り付ける技法で巨大なゼウス像を制作することにした
ほぼ同時期に制作された彼の代表作の1つ、アテネのパルテノン神殿に祭られていたアテナ像と同じ技法だ

オリンピアの聖域にあったフェイディアスの工房は、2列に並んだ円柱により3つの身廊に分かれており、神殿内のゼウス像を安置する場所と同じ寸法になっていた

フェイディアスはゼウスの顔や体などの細部を丹念に彫刻し、表情、髪、ひげ、衣服のひだなどの表現にも磨きをかけ、像に生命を吹き込んだ貴石や色ガラスなど、さまざまな素材が像を引き立てるために使われた
金と象牙が美しく輝くように、完成した彫像は磨き上げられ、象牙と木材の保護のためにオリーブ油を塗布された

2世紀ギリシャの旅行家であり地理学者のパウサニアスは、著書『ギリシャ案内記』で、この像について輝かしい言葉で描写している

「ゼウス像は金と象牙でできていて、玉座に腰掛けている。頭にはオリーブの冠をかぶり、右手には勝利の女神ニケを載せている。ニケは同じく象牙と金でできていて、リボンをつけ、頭に冠を頂いた姿だ。ゼウスが左手に握っている笏(しゃく)は、あらゆる種類の金属で装飾され、その上にはワシがとまっている。ゼウスのサンダルも衣も金でできていて、衣には動物とユリの花の彫刻が施されている」

明かりの問題
ここで1つ疑問が生まれる
神殿が小さく思われるほど巨大で、入り口よりも高い位置にあるゼウス像は、どのような明かりに照らされていたのだろうか?

入り口からの光が神殿内に差し込むのは日の出のときだけだった
しかし、ランプ、ロウソク、松明などの人工的な光が主な光源であったとは考えにくい
これだけ巨大なものを照らし出すには膨大な数が必要になるからだ
屋根に天窓を設けた可能性もあるが、その場合、内部は風雨にさらされることになる

紫外線やレーザーを使った最近の研究によって、神殿の屋根には木枠に支えられた薄い半透明の大理石のタイルが載せられていて、一日中、薄暗いながらも一定の太陽光が入るようになっていた可能性が示された
この構造なら、神殿の内部と彫像を風雨から守りつつ、十分な明るさが得られたはずだ

失われた七不思議
壮麗な神殿と巨大なゼウス像が完成したことで、エリスの聖域は、古代ギリシャの最も重要な宗教的中心地の1つとなった
人々は競技のためだけでなくゼウス像を観るためにオリンピアを訪れた
ゼウス像は古代で最も有名な彫像の1つとなり、各地の硬貨の図柄になっただけでなく、神々の座像の原型にもなった

やがてローマ時代が到来し、紀元4世紀にキリスト教が普及したことが、ゼウス像にとって最大の脅威となった
ローマ皇帝テオドシウス1世は、西暦391年に異教を非合法化し、すべての古代の聖域を放棄するよう命じた
オリンピックも禁止され、オリンピアの聖域は使われなくなり、やがて廃墟と化した

その中で、ゼウス像は別の運命をたどった
テオドシウス2世の宮廷の宦官が、当時東ローマ帝国の首都だったコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)にこの像を運ばせ、ラウスス宮殿の「異教の古物」コレクションに加えたのだ

ゼウス像がそれからどうなったのかは知られていない
火災で焼失したとも、地震で失われたとも言われている
5世紀の終わりには、ゼウス像はもうなかった
天才フェイディアスの彫刻は800年の歳月を経てこの世から失われたが、その精神は決して忘れ去られてはいない

(この記事は、NATIONAL GEOGRAPHIC日本版の記事で作りました)

世界の七不思議の一つに「オリンピアのゼウス像がある

世界の七不思議とは・・・
現在、一般的には、古代世界の七不思議として伝承されてきた
ギザの大ピラミッド
バビロンの空中庭園
エフェソフのアルテミス神殿
オリンピアのゼウス像
ハリカルナッソスのマウソロス霊廟
ロドス島の巨像
アレクサンドリアの大灯台
のこと


ギリシア神話は人間くさい面もあり興味深いですね

ギリシア神話小事典 (現代教養文庫 1000) 文庫

私が長年愛読している書籍
私がギリシア神話に興味をもったきっかけ
ギリシア神話の神々は人間くささもありキャラクターが立ち面白い
この書籍は特に神々の特徴にくわしい
ギリシア神話を知るうえで簡潔によくまとまっており、おすすめ
posted by june at 04:48| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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