ギガントピテクス・ブラッキー(Gigatopithecus blacki)は史上最大の類人猿だった
おとなの身長は約3メートル、体重は200~300キロもあり、現在の中国にあたる地域の深い森林に生息していた
1月10日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文は、地質年代と花粉記録、化石の歯の中に保存された手がかりを組み合わせて、ギガントピテクス・ブラッキーが衰退し、絶滅するまでの道のりを詳しく明らかにした
この印象的な草食動物が考古学者によって発見されてから100年近くになるが、絶滅の原因ははっきりしていなかった
新たな分析の結果、ギガントピテクスの独特なライフスタイルが生き残りを困難にしていたことが明らかになった
論文の筆頭著者の一人で、オーストラリア、マッコーリー大学の地質年代学者であるキラ・ウェスタウェイ氏は、「私の同僚の張穎奇(チャン・インチー)氏は、10年以上前からギガントピテクス・ブラッキーの研究をしていました」と言う
最大の謎の一つは、彼らが絶滅した年代だった
ウェスタウェイ氏は、ギガントピテクスの化石が発見された堆積物の年代を、より正確に特定できないかと考えた
そうすれば、ギガントピテクスがどのような世界で暮らし、なぜ絶滅してしまったのかを、より詳しく解き明かせる
これまで専門家たちは、密林を好んだギガントピテクスは生息地の樹木がまばらになるにつれて絶滅に追い込まれたと推測していた
だが、これまでに見つかった化石からは、その仮説を検証するために必要となる明確な年代が分からなかった
「時系列が明確になっていないと、間違った場所で手がかりを探すことになりかねません」とウェスタウェイ氏は言う
ギガントピテクス・ブラッキーと同じ時代に生きていた他の類人猿が生き残ったことは、謎を深めるばかりだった
実際、現在のオランウータンに近い仲間のポンゴ・ワイデンライヒー(Pongo weidenreichi)は、ギガントピテクスを絶滅に追いやった変化に耐えることができた
ウェスタウェイ氏らは、ギガントピテクス・ブラッキーが中国に生息していた時期を230万年前から21万5000年前までと推定した
「約200万年前の洞窟では、彼らの歯が何百本も見つかっています」と氏は言う
「けれども、彼らが絶滅寸前だった約30万年前の洞窟からは数本しか見つかっていません」
好物の食べ物が見つからなくなった
研究チームは、ギガントピテクスの化石が発見された場所の花粉化石を調べることで、この期間に彼らの生息環境に起きた変化を明らかにすることができた
その結果、彼らが暮らしていたマツ、カバノキ、クリなどが生い茂る森林は、約70万年前には木がまばらになり、より開けた草原に変化していたことが明らかになった
ギガントピテクスは、この環境の変化とともに衰退し、やがて姿を消したのだ
ギガントピテクスがこの変化を感じていたことは、歯を調べれば分かる
彼らの歯の化石には、食べた植物の影響を受けた痕跡が封じ込められているからだ
かつてギガントピテクス・ブラッキーとポンゴ・ワイデンライヒーは、樹木がうっそうと生い茂った森林に暮らし、ほぼ一年中、おいしい木の葉や果実や花を食べていた
しかし、やがて季節の変化が著しくなり、森林がまばらになってくると、ギガントピテクスは好物を見つけるのが難しくなった
一方、ポンゴ・ワイデンライヒーは食生活を変えて、手に入りやすい繊維質の植物を食べるようになった
オーストラリア、グリフィス大学の古生物学者であるジュリアン・ルイ氏は今回の研究には参加していないが、「研究チームは、ギガントピテクス・ブラッキーがこれまでの環境に特化しすぎて変化に適応できなかったことを見事に示しました」と言う
ギガントピテクスが生息していた時代、東南アジアは急激な環境の変化に見舞われていた
プレートの沈下により、地域の気候や生息地が大きく変化していたのだ
「米国の中央部の大部分が海中に沈んだらどんな変化が起こるか、想像してみてください」
しかし、ギガントピテクス・ブラッキーが絶滅に追いやられたのは、単に環境が変化したからではなく、彼らが速やかに適応することができなかったからだ。
ギガントピテクスの運命を決定づけたのは、変化
への対応のしかたでした」とウェスタウェイ氏は言う
彼らは体が非常に大きかったので樹上ではなく地上を移動しなければならず、餌を探しに行ける範囲が限られていたのだ
彼らは小枝や木の皮など、手の届くところにあった堅いものをできるだけ食べようとしたが、それも十分ではなかった
いまだ残る謎
約21万5000年前、最後のギガントピテクスは生息地の変化についていけずに絶滅した
しかし、物語の結末を知ったからといって、ギガントピテクスの謎がすべて解決したわけではない
ウェスタウェイ氏によると、最後のギガントピテクスの中には最大級の個体もいたが、その理由はまだ解明されていないという
さらにルイ氏によると、タイ、ベトナム、そしておそらくジャワ島からもギガントピテクスの化石が発見されているという
彼らも、同じ絶滅への道をたどったのだろうか?
それとも生息地によって異なる道をたどったのだろうか?
「今回の論文のおかげで、この時期の東南アジアにおける絶滅のダイナミクスについての私たちの理解は大きく深まりました」とルイ氏は言う史上最大の類人猿が姿を消した経緯は明らかになったが、同時に新たな謎も生まれた
(この記事は、NATIONAL GEOGRAPHIC日本版の記事で作りました)
身長3メートルで史上最大の類人猿・ギガントピテクス・ブラッキーは、食べ物の好みを変えられずに絶滅していたようだ
いわゆる変化に対応できず、「自然淘汰」され、絶滅したようだ
大きい身体も行動範囲を狭め、絶滅につながったのかも・・・
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2024年01月29日
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