2023年12月01日

北斎の「富嶽三十六景」全46作品、22年ぶりに国際的なオークションに出品へ・・・

江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849)の代表作として知られる錦絵「富(ふ)嶽(がく)三十六景」全46作品が、来年3月、世界的な競売会社・クリスティーズによるオークションに一括で出品されることになった
アメリカ西海岸のコレクターが所有しているもので、国際的なオークションに一括で出品されるのは22年ぶりだという
同社は今回の落札予想価格を300万ドル~500万ドル(4億5000万円~7億5000万円、手数料は含まず)とみている(デジタル編集部 小関新人)

「神奈川沖浪裏」1枚で3億7000万円

今回出品される全46作品は、同社の日本法人「クリスティーズジャパン」(東京都千代田区)で今月13、14日に公開され、その後、香港、パリの同社施設での公開を経て、米ニューヨークでのオークションにかけられる

富嶽三十六景は、江戸や東海道、常陸国や信濃国などから富士山の姿をとらえた木版画の浮世絵
1830(天保元)年から33(天保4)年ごろに作成された
出版が開始された当時から大変な人気で、売れ行きが好調であったため、36景では完結せず、計46図となった
舟に乗る人々を巨大な波がのみ込もうとする光景を描いた「神奈川沖浪(なみ)裏(うら)」は特に有名で、「赤富士」の通称で有名な「凱(がい)風(ふう)快(かい)晴(せい)」、「黒富士」として知られる「山(さん)下(か)白(はく)雨(う)」は、錦絵に詳しくなくとも目にしたことがある人は少なくないだろう

「神奈川沖浪裏」は、何度も同社のオークションに出品されている
23年3月のニューヨークでのオークションでは、276万ドル(約3億7000万円)で落札された
クリスティーズジャパンの山口桂社長によると、「簡単に言えば、初刷りが一番高い。また、来歴や作品の状態で価格は変わる。ここ5年ぐらい、世界で最も有名な日本美術であろうこの作品の需要が高まり、日本美術に興味はなくてもこれは欲しいというコレクターが増えた」という

また、「日本の美術品は中国の影響を受けているものが多く、かつては中国系の方が買うことは少なかった
近年は、日本人作家の現代美術の作品を購入するようになり、その流れの中で、浮世絵をポップアートのような感覚で購入する方が増えているように思う」と分析する

山口社長によると、「富嶽三十六景」が出版当時セットで販売されたことはなく、刷られた時期もバラバラ
ひとそろいになっているのは、コレクターの収集によるものだ
既に所有している作品であっても、より状態の良いものが売りに出ていれば、購入して差し替え、コレクションの価値を高めていくコレクターも多く、満足のいくセットを完成させるのに30年程度かかったケースもあるという
また、三十六景の中で人気のない作品は刷られた数も少なく、あまり流通しておらず、良い状態のものを見つけることが困難な点も、全作品収集を難しくしているという

年間350回のオークション
ところで、クリスティーズの名前は、同社のオークションにおいて高値で落札されたニュースなどで目にすることはあるが、一般にはなじみが薄い
どのような会社なのか

同社は1766年に美術商・ジェームズ・クリスティーがロンドンで創業した
1998年にフランスの投資会社「アルテミス」グループの傘下に入った
グッチやサンローラン、バレンシアガなどの高級ブランドが傘下にあるファッションのコングロマリット(複合企業)「ケリング」も同グループの支配下にある

世界46か国にオフィスを構え、2022年には総売上高が、過去最高の84億ドル(約1兆1000億円)を記録した
取り扱う商品は、近代絵画や現代美術をはじめ、宝石や時計、版画や写真、ワインやハンドバッグなど80種類以上ある
オークションは、ニューヨーク、香港、パリ、ジュネーブ、ロンドンを中心に、年間約350回行っており、その収益は、22年では同社の収益全体の約76パーセントを占めた
コロナ禍の影響を受け、約8割はオンラインによる入札だったという
日本では、売り手と買い手の仲介を業務としており、オークションは行っていない

過去最高は1枚で508億円
同社のオークションでの最高落札額は、2017年11月にニューヨークでのオークションに出品された「サルバトール・ムンディ(救世主)」
レオナルド・ダ・ビンチの作品とされる油彩画で、落札価格は約4億5000万ドル(約508億円)

20世紀美術での最高落札額は、アンディ・ウォーホルが描いたマリリン・モンローの肖像画で、約1億9500万ドル(約251億円)
22年5月にニューヨークでのオークションに出品された

日本美術では、08年3月に鎌倉時代の仏師・運慶作とされる木造大日如来坐(ざ)像(ぞう)を、三越が1437万7000ドル(約14億円)で落札したのが最高額だ

巨額の売買ばかりが目立つが、オンラインだけで入札できるオークションには、調度品や版画など、500ドル(約7万5000円)程度で落札できる可能性がある商品が出ることもある

売り方には、オークションのほかに、売り手と買い手が相対する「プライベートセール」という方式がある
オークションだと売買が公開されるが、プライベートセールであれば、非公開で売買できる
オークションの開催日程に左右されず、現金化までの時間が短いといったメリットもあり、美術館との取引の際に使われることがあるという

草間彌生さんなどが人気
最近人気の現代美術に関しては、山口社長は「存命の日本人作家で、世界的な注目を集める『現代美術』オークション、特にその中心地であるニューヨークでの競売に登場する作家は少ない」と指摘する
「日本美術」オークションの中で現代美術として売られる作家の作品よりも、「現代美術」オークションで売られる日本人作家の方が落札価格は高いそうで、「『現代美術』に出品されるには、世界的なマーケットや知名度、作品の質の高さが不可欠で、そういう条件を満たした作家には、草間彌生(やよい)さんや奈良美智さん、村上隆さん、杉本博司さんなどがいる。日本人アーティストというよりは国際的なアーティストという存在で、その意味で高値で売買されている」という

日本美術は近年、高額で外国人が落札する傾向が続いており、一度海外に出てしまうと日本に戻ってくることは少ないというが、山口社長は、「美術品はお金のあるところに流れるものであって、日本美術は海外で文化大使の役割を果たすし、世界のどこにあっても、破壊されなければ良い。北斎のように海外で評価される作家が、もっと出てくることを期待している」と話している

(落札価格は、落札時の為替レートで日本円に換算した)

(この記事は、読売新聞オンラインの記事で作りました)

葛飾北斎は、大胆な構図と色彩感覚で日本はもちろん海外でも評価の高い人物です

アメリカの雑誌「ライフ」で1999年に「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に日本人でただ一人選ばれています
誤解を恐れずにいえば日本人離れした感覚も(日本人らしい感覚もある)

引越しと改名が多かったようです

引越し93回は、絵を描くことに集中し、部屋が汚れたら引越しした結果で、改号30回は、弟子に号を売って収入を得ていたからだといわれますが、私は「常に(絵画の研究に)変化を求めた」北斎だったことも関係あると思います

北斎は90歳で亡くなりますが、死の直前に
「あと10年、いや5年、生かしていただけるなら真の絵描きになれるのに」
と言ったといわれます

まさに生涯、上昇志向を持ち続け前進し続けた北斎の絵への執念が感じられます


もっと知りたい葛飾北斎 改訂版 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) 単行本

ひたすら絵画を探求し、森羅万象を描いた葛飾北斎
生涯、上昇志向を持ち続け、前進し続けた男の生涯と作品
posted by june at 12:33| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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