2023年07月07日

新発見、4800キロ飛ぶオオカバマダラの秘密は羽の斑点!?

毎年、数百万匹のオオカバマダラがカナダ南部と米国北部の一帯から4800キロメートルも移動して、メキシコシティ郊外の森林地帯で越冬

「オオカバマダラの大移動は広く知られています」と、米ジョージア大学の動物生態学者であるアンディ・デイビス氏は話す
「しかし、エネルギーが乏しい小さな昆虫がなぜ驚異的な渡りを成し遂げられるのか。この謎は、まだ解明されていません」

ところが、2023年6月21日付で学術誌「PLOS ONEPLOS 」に発表された論文によると、米大陸を渡るオオカバマダラの不思議な力の一部は、驚くべきことに、その小さな羽の斑点の大きさにあるかもしれないとしている


デイビス氏のチームは、渡りルートのあちこちで計400匹近いオオカバマダラの羽の模様を集めて分析した
その結果、興味深い特徴が見つかった
メキシコまでの長旅を終えたオオカバマダラは、米ジョージア州や米ミネソタ州で見つかった渡りの途中のオオカバマダラよりも、羽の白い斑点が3パーセント大きい傾向が確認されたのだ
同時に、渡りを終える前の個体より、羽の黒い部分が3パーセント少ないこともわかった

この研究結果は何を意味するのだろうか

オオカバマダラは大移動で高度370メートルを飛ぶ
日光に当たった羽の温度は上昇するが、均一ではない
羽の縁の黒い部分は温度が高くなり、白い斑点部分は低いままだ
こうした現象が起きると、微小な空気の渦が生じ、空気抵抗が小さくなって効率的な飛行ができると、研究者たちは考えている

サメの皮膚や海鳥の羽の色にも、空気抵抗を減少させる同様の効果が明らかになっている
これらはすべて、人類の将来の技術にも重要な可能性をもたらす発見だ

「より長く飛行し日光のエネルギーを利用したドローンを開発したいのなら、こうした特性に着目すべきです」
論文の共同著者であるニューメキシコ工科大学機械工学准教授のモスタファ・ハッサナリアン氏はこう話している


この論文の第2部では、オオカバマダラと近縁のカバマダラ属6種との間で、白い斑点の大きさの違いを評価している

論文の共同著者で、当時はデイビス氏の研究室の学生だったクリスティナ・ヴー氏がこれらの斑点の大きさを調査したところ、オオカバマダラの白い斑点の大きさはずばぬけていた
次に斑点が大きかったのは小規模の渡りをする種で、渡りをしない5種が続いた

こうした結果から、斑点の大きさ、そして斑点が空気抵抗を減少させる能力が、実際に渡りに関係しているのかもしれないと研究者は推測している

「秋の大移動は、オオカバマダラにとって毎年の重要な淘汰イベントになっていると考えられます」とデイビス氏は言う
「ゴールにたどり着けるのは最も健康な個体だけ、つまり、感染症や病気にかかっておらず、大きく丈夫な羽を持つものだけなのです」

「そして、今回の研究で、渡りに最適な斑点も明らかになりました」とデイビス氏は付け加える


「次のステップは、羽の配色のわずかな違いが空気抵抗に観測可能な影響をもたらしているかどうかを検証することだ」とベルギーにあるゲント大学の生物学者であるミカエル・ニコライ氏は電子メールで伝えてきた

たとえば、今回の論文では配色のわずか3パーセントの違いを発見しているが、ニコライ氏の海鳥に関する研究では、鳥の翼の色が濃くなると飛行効率が20パーセント高まることを明らかにしている

非常に長い距離を飛ぶ場合はごくわずかな違いでもメリットになるという点については、ニコライ氏も同意している
だが、実証実験の結果が出るまでは、「非常に楽観的」ではあるが「確信には至っていない」とニコライ氏は話す

デイビス氏は「チョウに関する学界では、チョウの羽をこうした視点から見る人はいませんでした」と言い、ほかの研究者たちが今回の論文に触発され、この問題に取り組むことを期待している

「この研究は革命をもたらすでしょう」

(この記事は、NATIONAL GEOGRAPHICの記事で作りました)

上記研究は興味深いですね


世界で一番美しい蝶図鑑: 花や水辺を求め飛び回る (ネイチャー・ミュージアム) 単行本

日本を代表する昆虫カメラマンの海野和夫氏による世界の美しい蝶などの図鑑
posted by june at 04:10| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください