2025年03月12日

『風刺画』に描かれた怪物伝承 ~歴史が映し出す風刺のモンスター

風刺とは、遠回しに批判や揶揄を加える表現のことである

人類の歴史において、風刺はさまざまな形で用いられ、多くの風刺作品が生み出されてきた
特に社会の現状や実在の人物を誇張し、怪物のように描く手法は古くから存在する

そうした「風刺画に描かれた怪物」について解説する

1.ヲロシヤの人魂

『怪奇談絵詞』という書物が存在する

これは幕末から明治初期にかけて制作されたと考えられる妖怪絵巻で、作者は不明である
その中に登場する妖怪の一つが、「ヲロシヤの人魂」である

イラストに添えられた説明文には、

「人々恐れをなすといえども全く妄念でやいのたかばたなり。
筋引くようなるは糸なり。風烈しと見る時は早くおろしやおろしやと云う」

と記されている
これを意訳・要約すると、

「皆こいつを恐ろしいと言うが、それは迷信に過ぎない。実際は見掛け倒しで、まったく大したことはない。風が少し強まっただけで、『おろしや、おろしや』と騒ぎ立てる程度の存在でしかない」

といった意味になる

「おろしや」とは「オロシャ」、すなわちロシアの古い呼び方である
また、颪(おろし)と呼ばれる、冬に山から吹き下りる風も、その名に掛かっているとされる
以上のことからこの妖怪は、ロシアを侮蔑した風刺として描いたものだと考えられている

ロシアは今も昔も、世界を騒がす暗黒国家として名を馳せているが、そんなロシアの禍々しさを手堅く風刺した、見ごたえのある妖怪画だといえるだろう

2.バイコーン/シシュファス

バイコーン(Bicorn)とシシュファス(Chicheface)は、ヨーロッパに伝わる怪物である
この二つの怪物は対になっており、中近世の多くの風刺画や文学に、共に登場している

バイコーンは人食い怪物であり、夫婦の内、「恐妻家や誠実な夫」だけを食べるとされる
餌に事欠くことはなく、まるまると太った姿で描かれることがほとんどである

シシュファスもまた人食いだが、バイコーンとは対照的に、ガリガリにやせ細った姿で描かれている
これはシシュファスが、「夫に尽くす良き妻」しか食べられないからだとされる

これらの怪物は、ヨーロッパ社会の女尊男卑を表していると考えられる

しかし、実際のヨーロッパ社会は男尊女卑の構造を持っており、その中で立場の弱い男性を皮肉るために生まれた怪物ではないかという解釈もある

3.ファグア湖の怪物

ファグア湖の怪物(Monter of Lake Fagua)は、チリに出現したとされる怪物である

この怪物に関する記事は、1784年にフランスの新聞『Courier de L’Europe』に掲載された

それによれば、チリのファグア湖で、ドラゴンの体に人間の顔を持つという前代未聞の怪物が生け捕りにされたという
そして、この怪物は見世物としてヨーロッパへ送られる予定であると報じられた

しかし、実際には「ファグア湖」なる湖は存在せず、この報道は完全なガセネタであったことが後に判明している

この怪物のイラストの元となったのが、かのマリー・アントワネット(1755~1793年)を怪物に見立てた風刺画である

マリー・アントワネットはその破天荒な性格と言動ゆえに、フランス国民からの評判はすこぶる悪かった
彼女に関する数多くの風刺画が描かれ、中には醜悪な怪物に見立てたイラストも存在した

そのイラストの一つが、ファグア湖の怪物として流用されたのである

4. 百鬼晝行の妖怪たち

大正5年(1916年)に刊行された、作家・大町桂月(1869~1925年)の著作『絵入訓話』をご存知だろうか

同書には「百鬼晝行」という名目のもと、画家・平福百穂(1877~1933年)によって描かれた41体の妖怪が収録されている

桂月は、「百鬼夜行(妖怪の集団)は夜に現れるものと相場が決まっているが、近頃は図々しくも昼間にも出てくるようになった」と述べている
これは、当時の日本社会の近代化を「妖怪」という形で風刺したものであると考えられる

では、この41体の妖怪の中から、いくつかを取り上げて紹介していこう

序列二十七番目に当たるこの妖怪は、ハエと人間が混じり合ったような姿をしており、足や手を常に擦り合わせているという
この妖怪は「臭いもの」に群がる習性を持ち、恥も外聞も存在しない、極めて利己的な存在であるとされる
興味本位で何にでもたかり、払っても払っても湧いてくるので、五月蠅く邪魔くさいこと、この上ないとのことである。
流行を追うだけのミーハーな衆愚や、事件・事故に群がる野次馬など、集団心理の愚かさをハエに例えて風刺した妖怪だと考えられている

序列三十五番目に位置するこの妖怪は、牛と人間の合いの子のような姿をしている
この妖怪は、この世の全てを疑っており、あっちこっちにフラフラするが、結果的に何もしない
その角は嫉妬深さや陰険さ、狡猾さを象徴し、他人の意見を聞き入れることなく突き倒し、唯我独尊を貫く
また、恩人や友人を平気で裏切る薄情さも兼ね備えている
にもかかわらず、自らを近代的で優れた人物と称し、何の恥じらいもなく振る舞う、人でなしの牛の化け物と説かれている

序列三十七番目のこの妖怪は、一見ツルに見えるが、よく見ると首が湾曲し、頭部は筆になっているという
新聞社や出版社に特に多く生息しており、その姿そのままに「筆を曲げて」記事を書く
金のためなら事実を湾曲し世に広めることも厭わない、腐りきったジャーナリズムを象徴した怪物だとされる
「ペンは剣よりも強し」と言うように、時として言葉は、武力以上の影響力を持つ
こんな怪物が跋扈する国は、やがて傾き、滅びの道を辿るであろうと、桂月は説いている

これら妖怪は現代社会にも通ずる、人間の普遍的な愚かさを表した存在だといえるだろう

参考 : 『怪奇談絵詞』『妖怪図鑑』他
文 / 草の実堂編集部

(この記事は、草の実堂の記事で作りました)

風刺画は、世間や世相、権力者などを皮肉ったり、からかったり、批判したものだ

『風刺画』に描かれた怪物たちも、それらを怪物という形で攻撃したものあ

これら妖怪は現代社会にも通ずる、人間の普遍的な愚かさを表した存在だといえるだろう





おもしろい世界の風刺画 (OAK MOOK) ムック

産業革命以降に西欧に広まった風刺画作品を一冊にまとめたのが本書です
各時代の政治や世相、権力者を鋭く批判し、諧謔を持って表現した風刺画の数々を、
風俗や絵画表現にも注目しながら、お楽しみください
風刺画は時代を映す鏡ともいえます
posted by june at 12:50| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

NY株は続落し大幅下落、日経平均株価は反落

11日(現地時間)のNY株(ダウ平均株価)は、続落し、終値は前日比の終値は前日比478ドル23セント安の4万1433ドル48セント、昨年9月以来、約半年ぶりの安値をつけた。トランプ米大統領の関税政策への懸念から一時700ドル超下落した、トランプ氏は11日、自身のSNSで、12日に実施予定の鉄鋼・アルミニウム製品への25%の追加関税について、カナダに関しては50%にまで引き上げるよう指示したことを明らかにした、カナダ東部オンタリオ州が10日、米国の3州向けに供給する電力価格を25%引き上げると発表したことに対する報復措置としている、トランプ氏はその後、カナダに対する関税引き上げを見直す可能性を示唆した。また、ウクライナとロシアの停戦への期待から、ダウ平均は下げ幅を縮小する場面もあった

ハイテク株中心のナスダックは32.22ポイント安の1万7436.10だった

S&P500は49.49ポイント安の5572.07



11日(日本時間)の日経平均株価は反落し、終値は前日比235円16銭安の3万6793円11銭、米国景気の先行き懸念を背景に前日の米国株式相場が大きく下落した流れを受け、東京市場でも幅広い銘柄に売りが先行した、日経平均は朝方に1000円を超えて下落し、取引時間中としては2024年9月17日以来、およそ半年ぶりに心理的節目の3万6000円を下回る場面があった、売り一巡後は自律反発狙いの買いなどが入り、大引けにかけては下げ渋った


(この記事はネットニュースの記事で作りました)

11日のダウ平均株価の終値は前日比470ドル超の大幅下落
posted by june at 07:11| Comment(0) | 株価動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

再生可能エネルギーとして注目の「バイオマス発電」。その課題とは?

地球上で起きていること、どれだけ知っている?

この地球で当たり前に感じていることでも、うまく説明できないことがありますよね
例えば、「青い空が夕暮れに赤く染まるのはなぜ?」「台風が日本列島めがけてやってくる理由は?」

そんな地球に生きる私たちが知っておくべき「理系雑学」をご紹介します
太陽系を含む地球の歴史をはじめ、地球上で成立した大自然や気候、動植物、資源など、地球をめぐる大疑問にスッキリ回答!
あらためて考えると、私たちはこの地球にまつわるさまざまなことを、じつはほとんど知らないのかもしれないかもしれません

※本記事は雑学総研著の書籍『人類なら知っておきたい 地球の雑学』から一部抜粋・編集しました


生物資源を活用する「バイオマス発電」の課題とは?

最近、バイオマス発電という言葉をよく聞く
「バイオマス」とは再生可能な生物由来の有機質資源で、木屑や稲わら、麦わら、もみ殻、家畜の排泄物、燃えるゴミのほか、多くのものが挙げられる
バイオマス発電は、それまでゴミとされていたものをも燃料としてエネルギーを生み出し、しかもカーボンニュートラルをめざしているという

「カーボンニュートラル」とは、炭素を循環させる考え方である
たとえば、植物を燃やすと地球温暖化を招く二酸化炭素が排出されるが、植物は成長過程で光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収しているため、排出と吸収のプラスマイナスはゼロになる
このように、大気全体の二酸化炭素の増減に影響を与えないようにするのがカーボンニュートラルなのだ

ただし、バイオマス発電は、燃料を効率よく、安価に、しかも安定して調達できることが前提となる
発電の燃料として消却施設に受け入れるためには、生物由来で燃えるものなら何でもいいというわけにはいかない
徹底した分別が必要である

また、燃料を加工したり運搬したりするために二酸化炭素を多量に排出するようでは本末転倒になる
トラックでバイオマスを運ぶ際にも二酸化炭素は発生するから、狭い地域内で燃料を得て、発電まで完結するシステムをつくることがバイオマス発電の課題である

こうした条件があるため、バイオマス発電の設備は小規模で、最大でも5万キロワット程度である
現在、自治体と農業団体などが共同でバイオマス発電に取り組み、電力や売電収入を地域に還元するといった取り組みもなされている

著=雑学総研/『人類なら知っておきたい 地球の雑学』

(この記事は、レタスクラブの記事で作りました)

再生可能エネルギーとして注目の「バイオマス発電」。その課題とは?

「バイオマス」とは再生可能な生物由来の有機質資源で、木屑や稲わら、麦わら、もみ殻、家畜の排泄物、燃えるゴミのほか、多くのものが挙げられる
バイオマス発電は、それまでゴミとされていたものをも燃料としてエネルギーを生み出し、しかもカーボンニュートラルをめざしているという
「カーボンニュートラル」とは、炭素を循環させる考え方である
たとえば、植物を燃やすと地球温暖化を招く二酸化炭素が排出されるが、植物は成長過程で光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収しているため、排出と吸収のプラスマイナスはゼロになる
このように、大気全体の二酸化炭素の増減に影響を与えないようにするのがカーボンニュートラルなのだ

ただし、バイオマス発電は、燃料を効率よく、安価に、しかも安定して調達できることが前提となる
発電の燃料として消却施設に受け入れるためには、生物由来で燃えるものなら何でもいいというわけにはいかない
徹底した分別が必要である
また、燃料を加工したり運搬したりするために二酸化炭素を多量に排出するようでは本末転倒になる
トラックでバイオマスを運ぶ際にも二酸化炭素は発生するから、狭い地域内で燃料を得て、発電まで完結するシステムをつくることがバイオマス発電の課題である
こうした条件があるため、バイオマス発電の設備は小規模で、最大でも5万キロワット程度である
現在、自治体と農業団体などが共同でバイオマス発電に取り組み、電力や売電収入を地域に還元するといった取り組みもなされている




人類なら知っておきたい 地球の雑学 (中経の文庫) 文庫

地球(を含めた宇宙)には謎や不思議、ギモンが多くあります
空はなぜ青く、夕焼けは赤いのだろうか!?とか・・・
そんな「理系雑学」を楽しくわかりやすく解説
posted by june at 04:19| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする