2025年02月17日

『ウナギの妖怪伝承』

ウナギは、栄養価が高く精力をつける食材として広く知られており、日本では古くから夏バテ対策の定番として親しまれてきた
しかし、近年の漁獲量の減少が深刻化しており、このままでは絶滅が現実のものとなる可能性が指摘されている

そんなウナギだが、食卓だけでなく、人々の想像力をかき立てる存在でもある
古来、世界各地でウナギを題材にした神話や伝承が数多く生まれ、時には恐ろしい妖怪として描かれることもあった

そうした驚異的な「ウナギ妖怪」の伝承について詳しく解説する

1.鰻男

鰻男(うなぎおとこ)は、岩手県雫石村に伝わる、好色なウナギの怪人である

この妖怪に関する伝承は、以下である

(意訳・要約)

雫石村の沼返という場所に住む家族の一人娘は、大変美しいことで有名だった。

その娘の元に、いつ頃からか謎の男が、夜這いをかけてくるようになった。
「あなたは誰ですか?」と娘が尋ねても、男は一言も喋らず、不敵な笑みを浮かべるばかり。
不審者の誘いなど普通は断るものだが、男は顔だけは良かったのか、娘も体をついつい許してしまったという。

大切な娘が、正体不明の男と毎夜密会を続けていることに、両親は次第に不安を募らせていた。
そんなある日、娘の母親が、家の軒下から聞こえる不審な声を耳にする。

「へっへっへ。長年の夢が叶い、ついに人間相手に子種を残すことができたぜ」
「それは素晴らしい。しかし正体がばれたら、お前の子は根絶やしにされるであろう」
「バレやしねぇよ。お前は心配性だな」
「人間をなめてはならぬ。端午の節句(5月5日)に使う五色の薬草を煎じて飲むことで、胎の子はたちまち水となる。そうなれば、お前の苦労も文字通り水の泡だ」

なるほど、あの男は妖魔の類であり、娘は孕まされていたのか・・・と両親は理解した。

そこで、ショウブやヨモギといった薬草の汁を娘に飲ませたところ、化け物の子が生まれてくることはなかったという

後で分かったことだが、あの男の正体は、近所の沼に生息するウナギの化身であったそうだ

2. イクチ/あやかし

イクチとは、常陸国(現在の茨城県)などに伝わる、巨大な海の怪異である

江戸時代の歌人・津村淙庵(1736~1806年)の著書「譚海」によると、イクチは夜になると現れるウナギに似た怪物であり、船にヌルリと乗り上げ、ゆっくりと通過をしていくという

その全長は異常に長く、通過しきるのに3時間ほどかかるそうだ
しかもその間、イクチの体からは絶えずドロドロした油が流れ出てくるため、船員たちは延々と油を汲み取って、海へ捨て続けなければならないという
そうしないと油の重みで、船が沈んでしまうからだ

イクチがいなくなり、油を全て捨て終わっても、お次はベトベトになった甲板の掃除が待っているから堪らない

できれば遭遇したくない、災害のような妖怪だといえよう

また、妖怪画家・鳥山石燕の画集「今昔百鬼拾遺」においてイクチは、「あやかし」という名前で掲載されている

昨今イクチは、このあやかしの名で紹介されることが多い

3.トゥナ

トゥナ(Tuna)は、ポリネシア(ハワイやニュージーランド等)に伝わる、ウナギの神である

この神にまつわる伝承には、さまざまなバリエーションが存在する

その中でも典型的な例として、トゥナが英雄「マウイ」の妻「ヒナ」を寝取ろうとし、惨殺されるというものがある
トゥナはウナギ特有のヌメりでヒナを誘惑するが、激怒したマウイに首を刎ねられる
首は地中に埋められ、やがてその場所からは、ココナッツの木が生えてきたという

好色な邪神扱いされることが多いトゥナだが、愛に満ち溢れた善神として語られる場合もある

(意訳・要約)

昔々あるところに、ヒナという少女が住んでいた。

彼女が泉で水浴びをしていると、突然巨大なウナギが現れ、まとわりついてきた。
ウナギの全身は粘液にまみれており、ヒナはそのヌルヌルとした快感に堪え切れず、悶絶してしまう。

それからヒナとウナギは、毎日のように逢瀬を重ねた。

ある時、ウナギは逞しい人間の男に変身し、ヒナを驚かせた。
ウナギは「トゥナ」と名乗り、ヒナと一緒に暮らしたいと言ってきたのだ。
ヒナはもちろん、これを快諾する。

二人は幸せな夫婦生活を送っていたが、ある日突然、トゥナが別れを切り出してきた。
突然の申し出に、ヒナは困惑する。

トゥナ曰く、これからこの地に大雨が降り、全てが海の中に沈むとのこと。
だがウナギの神である自分が生贄になることで、世界を救うことが可能なのだという。
あまりの衝撃に、ヒナは混乱したが、トゥナは優しく語りかけた。

「雨が降り始めたら、私はウナギになって君のもとへ馳せ参じよう。そして私の首を斧で刎ね飛ばし、急いで山に埋めるのだ。いいね?」

そう言い残し、トゥナはヒナの前から姿を消した。

やがてトゥナの予言通り、大雨が降り始め、辺り一帯が水没し始めた。
しかしヒナは避難することなく、トゥナの到来を待ち続けた。

しばらくすると、トゥナがウナギの姿でヌルリと現れたので、ヒナはすかさず斧で首を切り落とした。
そしてその首を、山の頂に埋めた瞬間に、雨はピタリと止んだ。

数年後、トゥナの首を埋めた場所から一本の木が生えてきた。
ココナッツが実るヤシの木、すなわちココヤシだ。

ココヤシは実も葉も枝も余すことなく利用され、ポリネシア文化の形成に一役買ったのである。

参考 : 『妖怪図鑑』『ハワイの神話と伝説』他
文 / 草の実堂編集部

(この記事は、草の実堂の記事で作りました)

ウナギは食べると美味しいですが、細長くニョロニョロ、ヌメヌメしており、奇怪な生物でもあります

少しヘビにも似ています




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posted by june at 12:15| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【量子センサー】非常に精密な磁場が測れるSQUIDとは?

小さな変化も逃さない量子センサー!

「電子が1個、電子が2個〜」と量子の粒を数えることは、世界でいちばん小さなスケールで〝もの〟を数えていることになります
そうした特徴を使って小さな変化を測定する装置が「量子センサー」で、数える対象にはエネルギーや明るさ、電気、位置、速さなどさまざまなものがあります

量子センサーでもっとも有名なセンサーの1つが磁場のセンサーです
磁場(の束)の最小単位は磁束量子と呼ばれ、1束、2束と数えることができます
ちなみに、みなさんの体にはいま地球からの磁場がおおよそ100億束くらい通っています
なので、磁束量子1束がいかに小さいかがわかるかと思います

磁場の精密測定には超伝導体という特殊な物質が使われています
この物質をリング状にした「超伝導リング」は、磁束が1束、2束、3束〜と整数でしか入らない特徴を持っていますが、これを使って小さな磁場の変化を数えることができます
それが最小の数え方だと思っていたら、さらに応用型の「SQUID(スクイッド)」というすごいデバイスが登場しました
先ほどの超伝導リングにうっすら切れ目を入れたSQUIDでは、リングの中を整数以下の束までが通れるようになりました
たとえば2.1束、2.2束〜のようにです
いまでは非常に精密な磁場が測れるようになったSQUIDを使って、半導体検査や地熱調査、金属資源の探索などさまざまな測定が行われています

わたしたちに身近な応用の例として、SQUIDを使った脳磁場の測定があります
わたしたちの脳は興奮するとすごく小さな電流が流れ、その電流によってほんのわずかな磁場が発生します

この微小な磁場の変化をSQUIDは逃しません
多様なシチュエーションで脳のどの部分が活動しているのか測定することで、脳の機能の理解が大きく進んでいるのです

量子センサー超伝導リング

量子センサーの超伝導リングでは整数個だけ穴の中を磁束が通れるが、SQUIDでは整数個以外でもリングを通れる
量子センサーは非常に高い感度で磁場や温度などを測定できるため、既存のセンサーでは計測不可だった微弱な信号を感知し、生体内の活動などの測定も可能

脳磁計

被験者が動いてもスキャンが可能となった脳磁図検査用スキャナー
この装置は脳全体をスキャンして脳の電気生理学的過程が観察できるため、罹病時や健康状態での脳の活動を調べることができるという



「ひつじが1匹、ひつじが 2匹〜」なんて寝るための呪文があるよね(これは都市伝説がいろいろあって出元がはっきりしない)
ひつじを「電子が1個、電子が 個〜」に変えて数えてみると、この世でいちばん小さな単位をボーッと唱(とな)える単調さに、ついまぶたがふさがるかも
そんな極小のものを物理的に測定するのが「量子センサー」
中でもSQUIDは磁場を測るためのすぐれた装置なんだね
それに脳磁場も測れるから、あまりにも怒り狂っている人には、「怒り過ぎて頭から湯気と磁場が出てるよ」とこっそり教えてあげるのもいいかも

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう

(この記事は、ラブすぽの記事で作りました)

小さな変化も逃さない量子センサー!

「電子が1個、電子が2個〜」と量子の粒を数えることは、世界でいちばん小さなスケールで〝もの〟を数えていることになります
そうした特徴を使って小さな変化を測定する装置が「量子センサー」で、数える対象にはエネルギーや明るさ、電気、位置、速さなどさまざまなものがあります

量子センサーでもっとも有名なセンサーの1つが磁場のセンサーです
磁場(の束)の最小単位は磁束量子と呼ばれ、1束、2束と数えることができます
ちなみに、みなさんの体にはいま地球からの磁場がおおよそ100億束くらい通っています
なので、磁束量子1束がいかに小さいかがわかるかと思います

磁場の精密測定には超伝導体という特殊な物質が使われています
この物質をリング状にした「超伝導リング」は、磁束が1束、2束、3束〜と整数でしか入らない特徴を持っていますが、これを使って小さな磁場の変化を数えることができます
それが最小の数え方だと思っていたら、さらに応用型の「SQUID(スクイッド)」というすごいデバイスが登場しました
先ほどの超伝導リングにうっすら切れ目を入れたSQUIDでは、リングの中を整数以下の束までが通れるようになりました
たとえば2.1束、2.2束〜のようにです
いまでは非常に精密な磁場が測れるようになったSQUIDを使って、半導体検査や地熱調査、金属資源の探索などさまざまな測定が行われています

わたしたちに身近な応用の例として、SQUIDを使った脳磁場の測定があります
わたしたちの脳は興奮するとすごく小さな電流が流れ、その電流によってほんのわずかな磁場が発生します

この微小な磁場の変化をSQUIDは逃しません
多様なシチュエーションで脳のどの部分が活動しているのか測定することで、脳の機能の理解が大きく進んでいるのです

量子センサー超伝導リング

量子センサーの超伝導リングでは整数個だけ穴の中を磁束が通れるが、SQUIDでは整数個以外でもリングを通れる
量子センサーは非常に高い感度で磁場や温度などを測定できるため、既存のセンサーでは計測不可だった微弱な信号を感知し、生体内の活動などの測定も可能

脳磁計

被験者が動いてもスキャンが可能となった脳磁図検査用スキャナー
この装置は脳全体をスキャンして脳の電気生理学的過程が観察できるため、罹病時や健康状態での脳の活動を調べることができるという


SQUIDは小さな変化も見逃さない「超」精密機器だ



眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話: 量子の世界を知らずして たぶん 未来は語れない。 単行本

物理の世界を一変させた量子(力学)論
相対性理論もかなり「ぶっとんだ」理論だが、量子(力学)論も「ぶっとんだ」凄い理論だ
この驚異の量子の世界を追う
posted by june at 03:43| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする