球形の実から芽が生えたような珍しい見た目をした「くわい」
おせち料理に使われる野菜というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか
くわいとはどのような野菜なのか詳しく解説します
記事の後半では、くわいのおいしい食べ方やおすすめレシピもご紹介するので、ぜひ最後までご覧くださいね
くわいとは?
「くわい」とは、オモダカ科の水生多年草で、水田のような環境で育つ野菜です
日本のお正月には欠かせないおせち料理に使われる野菜として知られていますが、くわいの原産国は中国であり、日本には平安時代に伝わってきたといわれています
「鍬(くわ)のような形をした葉の下になる芋」という意味で「くわいも」と呼ばれたのが名前の由来で、それがいつしか「くわい」に変化したのだそうです
漢字では「慈姑」と書きます
くわいの主な産地は広島県や埼玉県であり、旬の時期は冬が始まる11月から12月にかけて
丸い実のように見えるのは「塊茎(かいけい)」と呼ばれて茎の部分にあたり、泥の中に埋まっています
私たちが食べているのは、この養分を蓄えた塊茎を収穫したものです
ちなみにくわいには青くわいと白くわい、吹田くわいの3種類がありますが、日本で多く栽培され出回っているのは「青くわい」なのだそうです
現在は中国や日本以外のアジアやアメリカ、ヨーロッパなど広い地域で自生していますが、食用にしているのは日本と中国だけなのだとか
日本では煮物にしていただくことが多いですが、中国では、スライスして炒め物などに使われています
くわいはなぜおせちに使われるの?
先ほど少し触れましたが、日本でくわいは一般的におせち料理でよく見かけますよね
これには、くわいの芽が出る姿が「芽出たい(めでたい)」、さらに大きな芽が伸びる様子から出世や向上を連想させるという理由があり、縁起物として使われるようになったといわれています
くわいをおせち料理に取り入れるときは煮物にすることが多いと思いますが、縁起物ということもあり、形を崩さないようにしなければなりません
そのためにはまず、煮芽を残しながら塊茎の皮を丁寧に剥きましょう
そして、不老長寿の願いを込めて六角形、もしくは八角形の形にして「万年生きる」といわれている亀の形にします
くわいを煮物にするときは、ぜひ試してみてくださいね
くわいはどんな味?
先ほど解説したように、日本で流通しているくわいの多くは青くわいと呼ばれる品種です
青くわいは皮がきれいな青色をしているので、「田んぼのサファイア」と呼ばれることもあるんですよ
ここではそんな青くわいと、中国料理で出てくる白くわいの味の特徴をそれぞれ確認してみましょう
青くわい
青くわいは加熱するとホクホクとした食感とほろ苦さに加え、ほのかな甘みがあるのが特徴です
生のくわいはアクが強いですが、適切な下処理をすることでよりおいしく食べられます
白くわい
ちなみに、日本ではほとんど見かけない白くわいは中国でよく使われる品種で、青くわいに比べて肉質が硬いのが特徴です
そのため、炒め物などに使うとシャキシャキとした食感を楽しめます
くわいのアク抜き方法
生のくわいには特有のえぐみがありますが、アク抜きをすることでえぐみを和らげることができます
まず、皮を剥いたくわいを水にさらします
一度水を捨て、お湯または米のとぎ汁で2~3回ゆでこぼしたらアク抜きの完了です
くわいは芽の部分も食べられます
特に縁起物として料理に使うときは、芽が出ている姿に意味があるので、皮を剥くときは切り落とさないよう注意してくださいね
くわいのおいしい食べ方は?
くわいの味わいや食感、さらにアク抜きのやり方がわかったところで、続いてはくわいのおいしい食べ方をご紹介します
ぜひ参考にしてみてくださいね
含め煮
くわいを使ったおせち料理といえば含め煮
くわいの特徴である芽が出ている形を活かせる料理です
くわいのホクホクとした食感やほろ苦さを楽しめますよ
素揚げ
素揚げも、くわいのホクホクとした食感を楽しめる料理
シンプルに塩で味つけしてもおいしいですが、青のりやコンソメなどを使ってアレンジするのもおすすめですよ
くわいごはん
鶏もも肉や油揚げ、人参といった一般的な炊き込みごはんの具材と一緒にくわいを使ったり、素揚げにしたくわいを炊き込みごはんに混ぜ込んで作られる「くわいごはん」
くわいの生産量の多い埼玉県の草加市や越谷市では、地域の伝統的な料理としてくわいごはんが給食で出るのだそうです
クリーム煮
ホクホクとした食感のくわいは、クリーム煮にするのもおすすめ!
ほろ苦さとまろやかなクリームがよく合いますよ
青くわいを使って洋風に仕上げるほか、シャクシャクとした食感の白くわいを使って中華風クリーム煮にしてもおいしくいただけます
炒めもの
中華料理のお店に行くと、炒め物にくわいが入ってることがよくあります
食感が楽しくとてもおいしいので、オイスターソース炒めや八宝菜の具材に使ってみてくださいね
くわいを使ったおすすめレシピをご紹介!
さてここからは、くわいを使ったおすすめレシピをご紹介します
おせちの定番のくわいの煮物からおつまみにもおすすめの炒め物まで、絶品レシピをピックアップしました
ぜひチェックしてみてくださいね。
くわいの煮物
お祝いの席にもぴったりなくわいの煮物を作ってみましょう
煮込んだあとに一度冷やすことで、味がよく染みますよ
くわいは、下の方から皮を剥くと芽の部分を残しつつきれいに剥けるので、試してみてくださいね
くわいとしいたけの煮物
風味豊かなくわいとしいたけの煮物のご紹介です
めんつゆを使った簡単な味つけですが、しいたけの旨味が加わり奥深い味わいに!
ごはんのおかずはもちろん、お酒のおつまみにもぴったりなので、ぜひレパートリーに加えてみてくださいね
くわいと豚肉の炒め物
豚肉とくわいが相性抜群の炒め物はいかがでしょうか
豚バラ肉やオイスターソースの旨味がくわいによく合う、食欲をそそる味わいに仕上がっています
煮物とはまた違ったおいしさですよ
ぜひお試しくださいね
楽しみ方いろいろ!くわいを食べてみよう
くわいの特徴やおいしい食べ方について解説し、おすすめレシピをご紹介しました
縁起のよい見た目から、おせちに使われることが多いくわいですが、さまざまな楽しみ方がありましたね!
ご紹介したレシピも参考に、ぜひくわいを使ったいろいろな料理を作ってみてくださいね
(この記事は、クラシルの記事で作りました)
私の記憶では、あの天才浮世絵師・葛飾北斎もくわいが好物だったはず
絵を描くことだけに熱中し、自分のこと、健康にも無頓着で、奇人といわれながら、90歳の長寿だった北斎
こんな北斎が長寿だったのは、くわいが好物だったからといわれます
くわいは身体にもいいようです
もっと知りたい葛飾北斎 改訂版 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) 単行本
絵を描くことに情熱を傾けたある意味「変人」の天才画家・葛飾北斎・・・
森羅万象あらゆるものを描いた彼の作品と数奇で興味深い生涯を紹介・解説
2024年12月21日
2024年12月20日
映画や刑事ドラマでおなじみ「DNA鑑定」実際の精度ってどれくらい?
DNA鑑定の精度はどれくらい?
365京人からひとりを識別可能に
映画や刑事ドラマなどですっかりおなじみとなった科学捜査の手法のひとつに「DNA鑑定」があります
事件現場に残された痕跡から被害者や犯人を特定したり、親子の血縁関係を調べたりと、わずかな痕跡で何でも解明する魔法のツールのように描かれることもありますが、実際の精度はどれほどなのでしょうか?
現在、警察が事件捜査で行っている鑑定方法のひとつが「STR型検査法」です
特徴的な塩基配列が繰り返される回数に個人差がある点に着目し、これを染色体上の15部位で比較して識別を行うというもの
その精度は日本人にもっとも多いDNA型の場合でも、約4兆7000億人の中からひとりを識別できるといわれています
新たな検査試薬によりその精度はさらに向上しており、最近では565京人にひとりの確率で個人の識別が可能だそうです
地球の人口約80億人と比べると4兆7000億人でも585倍、565京人だとなんと7億倍!
数字の桁が大きすぎていまひとつピンと来ませんが、想像を絶する精度なのは間違いありません
DNA鑑定の精度向上に伴って民間でもさまざまなサービスが始まっています
食の安全性や人間の健康、資質に関する判定など興味深いものも多く、今後の発展にも注目です
DNA鑑定(STR型検査法)の仕組み
STR型検査法 - 特徴的な塩基配列の繰り返しの回数に着目
犯罪捜査以外にも可能性は無限大
DNA鑑定を用いた民間サービスも増えてきており、親子・きょうだい間の血縁関係の確認やスポーツなどの適性・資質判定、食品の安全性検査などにも活用されています
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康
(この記事は、ラブすぽの記事で作りました)
DNA鑑定といえば「科捜研の女ですね
DNA鑑定、科学の進歩は日進月歩で、565京人にひとりの確率で個人の識別が可能なのだとか
地球の人口が約80億人だと7億倍!!
数字が大きすぎてピンとこないほど驚くべき高い精度です
しかもDNA鑑定の可能性は他にも・・・
血縁関係の確認、個人の適正・資質判定、食の安全性確認などにも
ますます注目です
眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話: 環境や努力は遺伝に勝てない!?遺伝のギモンを専門家がすべて解決! 単行本
遺伝子は、その対象者の性格、特徴、どの病気にかかりやすいかなどもわかるといいます
ゲノム解読などの進歩で研究も進んできました
興味はあるけど謎やギモンも多い遺伝の世界
遺伝の差ままざなギモンを図解を駆使しわかりやすく解説
365京人からひとりを識別可能に
映画や刑事ドラマなどですっかりおなじみとなった科学捜査の手法のひとつに「DNA鑑定」があります
事件現場に残された痕跡から被害者や犯人を特定したり、親子の血縁関係を調べたりと、わずかな痕跡で何でも解明する魔法のツールのように描かれることもありますが、実際の精度はどれほどなのでしょうか?
現在、警察が事件捜査で行っている鑑定方法のひとつが「STR型検査法」です
特徴的な塩基配列が繰り返される回数に個人差がある点に着目し、これを染色体上の15部位で比較して識別を行うというもの
その精度は日本人にもっとも多いDNA型の場合でも、約4兆7000億人の中からひとりを識別できるといわれています
新たな検査試薬によりその精度はさらに向上しており、最近では565京人にひとりの確率で個人の識別が可能だそうです
地球の人口約80億人と比べると4兆7000億人でも585倍、565京人だとなんと7億倍!
数字の桁が大きすぎていまひとつピンと来ませんが、想像を絶する精度なのは間違いありません
DNA鑑定の精度向上に伴って民間でもさまざまなサービスが始まっています
食の安全性や人間の健康、資質に関する判定など興味深いものも多く、今後の発展にも注目です
DNA鑑定(STR型検査法)の仕組み
STR型検査法 - 特徴的な塩基配列の繰り返しの回数に着目
犯罪捜査以外にも可能性は無限大
DNA鑑定を用いた民間サービスも増えてきており、親子・きょうだい間の血縁関係の確認やスポーツなどの適性・資質判定、食品の安全性検査などにも活用されています
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康
(この記事は、ラブすぽの記事で作りました)
DNA鑑定といえば「科捜研の女ですね
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地球の人口が約80億人だと7億倍!!
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しかもDNA鑑定の可能性は他にも・・・
血縁関係の確認、個人の適正・資質判定、食の安全性確認などにも
ますます注目です
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遺伝子は、その対象者の性格、特徴、どの病気にかかりやすいかなどもわかるといいます
ゲノム解読などの進歩で研究も進んできました
興味はあるけど謎やギモンも多い遺伝の世界
遺伝の差ままざなギモンを図解を駆使しわかりやすく解説
NY株は11営業日ぶりに小幅反発、日経平均株価は5営業日続落
19日(現地時間)のNY株(ダウ平均株価)は、11営業日ぶりに小幅反発し、終値は前日比15ドル37セント高の4万234⒉ドル24セント
ハイテク株中心のナスダックは19.92ポイント安の1万9372.77
S&P500は5.08ポイント安の5867.08
19日(日本時間)の日経平均株価はおよそ3カ月ぶり5営業日続落し、終値は前日比268円13銭安の3万8813円58銭
(この記事は、ネットニュースの記事で作りました)
ハイテク株中心のナスダックは19.92ポイント安の1万9372.77
S&P500は5.08ポイント安の5867.08
19日(日本時間)の日経平均株価はおよそ3カ月ぶり5営業日続落し、終値は前日比268円13銭安の3万8813円58銭
(この記事は、ネットニュースの記事で作りました)
奥深い「浮世絵」の世界
山川出版社は、新刊『大江戸花形絵師競 おもしろすぎる!浮世絵案内』を2024年12月下旬に刊行する
2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう』では江戸の出版プロデューサー・蔦屋重三郎が主人公ということもあり、注目が集まる浮世絵
本書は、新千円札に北斎の浮世絵が採用されるなどますます世界からも注目を集める浮世絵の世界を、イチから楽しみたい、もっと深く楽しみたい方へ、うってつけの1冊だ
「冨嶽三十六景」で知られる葛飾北斎の波乱万丈の人生や、多くの浮世絵師を発掘した蔦屋重三郎が吉原の遊女と深い関係にあったという秘話など、イラスト付きで紹介されている
著者は、歴史作家・歴史タレントとしてメディアで活躍し、江戸風俗研究家として江戸時代の文化や生活を幅広く紹介するYou Tubeチャンネルが登録者数10万人を数える、堀口茉純
なかでも浮世絵に関しては、これまで数万点以上を見てきた筋金入りの専門家だ
(この記事は、Real Soundの記事で作りました)
浮世絵では私は特に葛飾北斎が好きだ
大江戸花形絵師競: おもしろすぎる! 浮世絵案内 単行本
人気絵師たちの作品・作風や生涯、蔦屋重三郎という江戸時代の浮世絵界を動かした人物などを取り上げる
2013年に中経出版から刊行された『UKIYOE17』の新装版
巻頭カラーを追加し、内容に加筆修正を加えてリニューアル
2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう』では江戸の出版プロデューサー・蔦屋重三郎が主人公ということもあり、注目が集まる浮世絵
本書は、新千円札に北斎の浮世絵が採用されるなどますます世界からも注目を集める浮世絵の世界を、イチから楽しみたい、もっと深く楽しみたい方へ、うってつけの1冊だ
「冨嶽三十六景」で知られる葛飾北斎の波乱万丈の人生や、多くの浮世絵師を発掘した蔦屋重三郎が吉原の遊女と深い関係にあったという秘話など、イラスト付きで紹介されている
著者は、歴史作家・歴史タレントとしてメディアで活躍し、江戸風俗研究家として江戸時代の文化や生活を幅広く紹介するYou Tubeチャンネルが登録者数10万人を数える、堀口茉純
なかでも浮世絵に関しては、これまで数万点以上を見てきた筋金入りの専門家だ
(この記事は、Real Soundの記事で作りました)
浮世絵では私は特に葛飾北斎が好きだ
大江戸花形絵師競: おもしろすぎる! 浮世絵案内 単行本
人気絵師たちの作品・作風や生涯、蔦屋重三郎という江戸時代の浮世絵界を動かした人物などを取り上げる
2013年に中経出版から刊行された『UKIYOE17』の新装版
巻頭カラーを追加し、内容に加筆修正を加えてリニューアル
2024年12月19日
古代人の日常には魔術があった―『古代ギリシア・ローマの魔術のある日常』
古代ギリシア・ローマの人々にとって魔術は身近なものだった
媚薬をつくり、気に入らない人に呪いをかけ、死者と対話し、悪霊から身を守る魔術や呪術は暮らしの中にあった
文献と史実からひもとく魔術的日常を記した書籍『古代ギリシア・ローマの魔術のある日常』から、まえがきを公開します
◆古代の魔術を知る
古代の魔術を学ぶためには、まずは「超常現象」のことを忘れよう
古代世界に超常現象というものはなかった
不可思議なものが存在しなかったからではなく、あらゆるものが不可思議だったからである
古代世界は神秘的だった
つまり「神の力にあふれていた」のだ
自然は魔術で満ちていた
花は魔術のように実に変わり、毛虫は魔術のように蝶に変身した
魔術によって雲に充満したエネルギーには、狙いすました雷の一撃で家を破壊できるほどの力があった
自然はまさに「超自然的」だった
ギリシア人やローマ人にとって「魔術」とは、求める結果を得るために自然の力を利用することだったのだ
ドングリを植え、水と時間の力を利用してオークの木を作り出すのは、魔術のなせる業だった
だから、立派なオークの木(木の精〔ドリュアデス〕を備えたもの)を生み出せたなら、きっとどんな魔術師でも鼻高々だったに違いない
もちろん、実行するために複雑な儀式や決まり文句を必要とする魔術もある
必ず成功するとは限らなかった――とはいえ、同じことはパンを焼く場合にも言える
古代人はイーストが何か知らなかったにもかかわらず、どうしたらパンをおいしく焼けるかは知っていた
魔術をかけるのも、パンを焼くのも、基本的な原理に変わりはない
材料を集め、適切な条件で混ぜ合わせ、それらが相互作用するのを期待に胸躍らせて待つ
材料のことはだいたい理解していても、それらがどんなふうに作用するかは理解していない
召喚する対象が乳酸菌ラクトバチルス・サンフランシセンシスであろうが、地下にいる「ヘルメスの霊魂」ヘルメス・トリスメギストス(三重の偉大なヘルメス)であろうが、そんなことは関係ない
どちらも魔術的な存在なのである
世界はそんな存在だらけだった
庭一つ一つに何十もが棲息していた
あらゆる木には精が宿り、あらゆる池には精霊(ニュムペー)が棲み、海の精ネレイスたちは海辺の波間で戯れていた
それに加えて、現在ではありふれた動物と考えられている魔法の生き物がいた――イタチ、キツツキ、狼など
あらゆる自然の場所には、その地の雰囲気を生み出す自然の力、地霊ゲニウス・ロキがいた
魔術を実行するのに大切なのは、そういった力――神秘的で目には見えないが現実に存在している力――を利用できる能力を持つことだった
だからこそ、「超常現象」を忘れることから始めるべきなのだ
しかし、古代世界における魔術を理解するに当たって、忘れるべきことはもっと多くある
現代の世界、とりわけ西洋では、目に見えない力を扱うのは長らく宗教の専売特許だった
けれども古代では、宗教の独占ではなかった
たいていの場合、宗教とは国家が推奨し市民が義務として奉じるもので、人間と神の間を取り持っていた
だが、神々を人間のように扱って、宇宙がどのように生まれてどんなふうに機能しているかを説明するのは、神話の役割だった
そして一般の人々は、目に見えないものと直接交流するために魔術を利用した
古代とは、神々が人間と同じく空間と時間の産物である世界、人間が精霊や神々と話すのみならず、人間自身が神になることもある世界なのだ
要するに、あらゆることが可能である世界を想像すればいい
それが、古代という魔術に満ちた世界である
こうした世界観は一見突飛に思えるかもしれないが、実はそうでもない
カオス理論や量子効果に関する最近の研究によれば、あらゆることが予測可能、理解可能なわけではない
「現実」は、我々が認識しているものとはまったく異なっているかもしれない
本書が探求しているのは、そうした「別の現実」の一つだ
惚れ薬を作ったり、呪いをかけたり、死者と話したりすることが可能な現実である
本書を読めば、邪悪な霊を見つけて追い払う方法、人狼や吸血鬼を避ける方法がわかるだろう
とはいえ、何かのやり方を「知っている」からといって、それを「行うべき」というわけではないのは強調しておきたい
古代ローマ人は、庭でトリカブトを栽培する人間を見つけたら問答無用で殺した
この一見無害な植物からは、きわめて容易に猛毒を作り出せるからだ
古代人は、禁断の魔術を使っている疑いのある人間を即座に裁く――そして罰する――ことが多かった
それは、魔術を理解していないからでも、「超常現象」を恐れていたからでもなく、ある種の活動はそもそも反社会的、あるいは途方もなく危険であり、断固として阻止する必要があったからである
今日でもそれは同じだ
ほとんどの西洋社会において、魔女や魔術師を自称するのは違法ではない
しかし今でも、魔術の中には、きわめて非合法的で、実践する本人や周囲の者にとって危険なものがある
たとえば、本書には古代人が神霊などの霊を冥界から呼び出した方法が書かれているが、読者諸君は決してそんな儀式を自宅で行わないでほしい
実験が失敗して、せいぜい時間とバケツ何杯分かの羊の血が無駄になる程度でおさまるかもしれない
だが最悪の場合は――成功するかもしれないのだ
[書き手]フィリップ・マティザック(古代ローマ史研究者)
オックスフォード大学セントジョンズ・カレッジにおいてローマ史で博士号を取得
ケンブリッジ大学成人教育校のeラーニングコースで古代ローマ史を教えている
邦訳書に『古代ローマ旅行ガイド』『古代アテネ旅行ガイド』『古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル』『古代ローマ歴代誌』『古代ローマの日常生活』がある
[書籍情報]『古代ギリシア・ローマの魔術のある日常』
著者:フィリップ・マティザック / 翻訳:上京 恵 / 出版社:原書房 / 発売日:2024年09月25日 /ISBN :4562074663
(この記事は、ALL REVIEWSの記事で作りました)
古代(ここではギリシア・ローマ人)にとって「超常現象」や「魔術」などは普通の「日常」だった
「超常現象」は「自然」であり、「魔術」の類は普通にあふれていた
この書では魔術使用の危険性、注意もしている
古代ギリシア・ローマの魔術のある日常 単行本
古代ギリシア・ローマには魔術があふれていた
この「魔術的日常」世界をひもとく
媚薬をつくり、気に入らない人に呪いをかけ、死者と対話し、悪霊から身を守る魔術や呪術は暮らしの中にあった
文献と史実からひもとく魔術的日常を記した書籍『古代ギリシア・ローマの魔術のある日常』から、まえがきを公開します
◆古代の魔術を知る
古代の魔術を学ぶためには、まずは「超常現象」のことを忘れよう
古代世界に超常現象というものはなかった
不可思議なものが存在しなかったからではなく、あらゆるものが不可思議だったからである
古代世界は神秘的だった
つまり「神の力にあふれていた」のだ
自然は魔術で満ちていた
花は魔術のように実に変わり、毛虫は魔術のように蝶に変身した
魔術によって雲に充満したエネルギーには、狙いすました雷の一撃で家を破壊できるほどの力があった
自然はまさに「超自然的」だった
ギリシア人やローマ人にとって「魔術」とは、求める結果を得るために自然の力を利用することだったのだ
ドングリを植え、水と時間の力を利用してオークの木を作り出すのは、魔術のなせる業だった
だから、立派なオークの木(木の精〔ドリュアデス〕を備えたもの)を生み出せたなら、きっとどんな魔術師でも鼻高々だったに違いない
もちろん、実行するために複雑な儀式や決まり文句を必要とする魔術もある
必ず成功するとは限らなかった――とはいえ、同じことはパンを焼く場合にも言える
古代人はイーストが何か知らなかったにもかかわらず、どうしたらパンをおいしく焼けるかは知っていた
魔術をかけるのも、パンを焼くのも、基本的な原理に変わりはない
材料を集め、適切な条件で混ぜ合わせ、それらが相互作用するのを期待に胸躍らせて待つ
材料のことはだいたい理解していても、それらがどんなふうに作用するかは理解していない
召喚する対象が乳酸菌ラクトバチルス・サンフランシセンシスであろうが、地下にいる「ヘルメスの霊魂」ヘルメス・トリスメギストス(三重の偉大なヘルメス)であろうが、そんなことは関係ない
どちらも魔術的な存在なのである
世界はそんな存在だらけだった
庭一つ一つに何十もが棲息していた
あらゆる木には精が宿り、あらゆる池には精霊(ニュムペー)が棲み、海の精ネレイスたちは海辺の波間で戯れていた
それに加えて、現在ではありふれた動物と考えられている魔法の生き物がいた――イタチ、キツツキ、狼など
あらゆる自然の場所には、その地の雰囲気を生み出す自然の力、地霊ゲニウス・ロキがいた
魔術を実行するのに大切なのは、そういった力――神秘的で目には見えないが現実に存在している力――を利用できる能力を持つことだった
だからこそ、「超常現象」を忘れることから始めるべきなのだ
しかし、古代世界における魔術を理解するに当たって、忘れるべきことはもっと多くある
現代の世界、とりわけ西洋では、目に見えない力を扱うのは長らく宗教の専売特許だった
けれども古代では、宗教の独占ではなかった
たいていの場合、宗教とは国家が推奨し市民が義務として奉じるもので、人間と神の間を取り持っていた
だが、神々を人間のように扱って、宇宙がどのように生まれてどんなふうに機能しているかを説明するのは、神話の役割だった
そして一般の人々は、目に見えないものと直接交流するために魔術を利用した
古代とは、神々が人間と同じく空間と時間の産物である世界、人間が精霊や神々と話すのみならず、人間自身が神になることもある世界なのだ
要するに、あらゆることが可能である世界を想像すればいい
それが、古代という魔術に満ちた世界である
こうした世界観は一見突飛に思えるかもしれないが、実はそうでもない
カオス理論や量子効果に関する最近の研究によれば、あらゆることが予測可能、理解可能なわけではない
「現実」は、我々が認識しているものとはまったく異なっているかもしれない
本書が探求しているのは、そうした「別の現実」の一つだ
惚れ薬を作ったり、呪いをかけたり、死者と話したりすることが可能な現実である
本書を読めば、邪悪な霊を見つけて追い払う方法、人狼や吸血鬼を避ける方法がわかるだろう
とはいえ、何かのやり方を「知っている」からといって、それを「行うべき」というわけではないのは強調しておきたい
古代ローマ人は、庭でトリカブトを栽培する人間を見つけたら問答無用で殺した
この一見無害な植物からは、きわめて容易に猛毒を作り出せるからだ
古代人は、禁断の魔術を使っている疑いのある人間を即座に裁く――そして罰する――ことが多かった
それは、魔術を理解していないからでも、「超常現象」を恐れていたからでもなく、ある種の活動はそもそも反社会的、あるいは途方もなく危険であり、断固として阻止する必要があったからである
今日でもそれは同じだ
ほとんどの西洋社会において、魔女や魔術師を自称するのは違法ではない
しかし今でも、魔術の中には、きわめて非合法的で、実践する本人や周囲の者にとって危険なものがある
たとえば、本書には古代人が神霊などの霊を冥界から呼び出した方法が書かれているが、読者諸君は決してそんな儀式を自宅で行わないでほしい
実験が失敗して、せいぜい時間とバケツ何杯分かの羊の血が無駄になる程度でおさまるかもしれない
だが最悪の場合は――成功するかもしれないのだ
[書き手]フィリップ・マティザック(古代ローマ史研究者)
オックスフォード大学セントジョンズ・カレッジにおいてローマ史で博士号を取得
ケンブリッジ大学成人教育校のeラーニングコースで古代ローマ史を教えている
邦訳書に『古代ローマ旅行ガイド』『古代アテネ旅行ガイド』『古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル』『古代ローマ歴代誌』『古代ローマの日常生活』がある
[書籍情報]『古代ギリシア・ローマの魔術のある日常』
著者:フィリップ・マティザック / 翻訳:上京 恵 / 出版社:原書房 / 発売日:2024年09月25日 /ISBN :4562074663
(この記事は、ALL REVIEWSの記事で作りました)
古代(ここではギリシア・ローマ人)にとって「超常現象」や「魔術」などは普通の「日常」だった
「超常現象」は「自然」であり、「魔術」の類は普通にあふれていた
この書では魔術使用の危険性、注意もしている
古代ギリシア・ローマの魔術のある日常 単行本
古代ギリシア・ローマには魔術があふれていた
この「魔術的日常」世界をひもとく