2024年12月28日

いよいよ寒くなるシーズンに。冷え性に効く漢方は?

症状と漢方処方 冷え性①
年間を通じて冷たいものを食べる食生活や、夏を冷房によって冷やしすぎる習慣などから、体を温める力が弱い陽虚の人が増えています
夜型の生活も血虚になりやすく、これも冷えの原因となります
基本的には温める治療を行いますが、温めても改善しない場合は、精神的な問題によって気の巡りが悪くなったことによる冷えが考えられます

体質からみる陽虚による冷え性
発汗により冷えの悪循環が起きやすい
処方:桂枝加附湯 中1功/八味地黄丸

温める力が足りない
冷えのいちばんシンプルな形は、温める力が弱い陽虚です
冷えているのに汗が出やすく、汗によって熱が逃げてさらに冷えるという悪循環が起こります

着替えるときに寒い、ちょっとした寒さでかぜをひいてしまうといった、体表だけが冷えている比較的軽い段階の冷えから、体の芯まですすんだ冷えまで段階があり、それによって処方が変わります

体を温める処方を
体表の冷えは、体を温める力のある附子や桂皮が配合された桂枝加朮附湯が用いられます
配合されている蒼朮には、じっとりした汗を止める働きがあります

冷えがすすんでいる場合は、腎を補う作用のある、陽虚の代表治療薬である八味地黄丸が用いられます
この生薬にも附子が配合されています

体質からみる血虚による冷え性
手足の先が冷え皮膚も乾燥しがちに
処方:当帰四逆加呉茱萸生姜湯

冬にしもやけができやすい
血虚によって血流が悪くなると、血脈中に寒邪がとどまり手足を冷やします
寒さによって手足にしもやけができるのは、このタイプの冷え性です
皮膚も乾燥しがちになります

冷えによる体へのダメージは少ないのですが、病態がすすむと月経痛や月経不順などのトラブルが出てきます
陽虚と血虚の両方をもっている人も多く、血虚が悪化すると陽虚になりやすくなります

血を補いながら温める
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、配合されている当帰や白芍薬で血を補い、細辛で温めます
ほかに呉茱萸、生姜も温める力がある生薬です
血虚を改善しながら、温めることでより冷えを改善する効果があがります

女性にみられる血虚の症状にも、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は用いられ、冷えによる月経痛を改善します

症状と漢方処方 冷え性②

体質からみる気滞による冷え性
精神面が原因で手足が冷える
処方:四逆散

緊張しやすい人の冷え
いくら温めても冷えが改善しない場合、精神症状から冷えが起きている可能性があります
緊張しやすく、イライラしがちで、暑がりで薄着なのに手は冷えているといったタイプです
体の内面は冷えていないのに、緊張から気血の巡りが悪くなって、手足の表面に冷えが生じます

冷えの治療はいらない
心底冷えているタイプではないので、温める治療は必要ありません
まず体の冷えの原因が、緊張などの精神症状であることを自覚することが大切です
そして緊張をとり、気血の巡りをよくする治療をします

四逆散は配合されている柴胡が緊張をとる働きをします
さらに気を巡らせる作用のある枳実も、気の流れをよくする効果があります

体質からみる水毒による冷え性
体に滞る水による冷えとむくみ
処方:真武湯/当帰芍薬散

陽虚になると水毒になりやすい
水の巡りが悪くなり、体に水が停滞して起こる冷え性です
もともと陽虚がある人は水毒になりやすいため、両方をあわせもっている人もいます
冷えの症状を改善するためにせっせと温めてもなかなか改善しないこのタイプは、むくみをとることで冷えの改善がみられます

水毒と陽虚の人は真武湯
水毒による冷えには、真武湯を用います
配合されている附子で温め、茯苓と蒼朮で水を流して巡りをよくします
水毒と陽虚のある人は温めながらむくみをとるのが効果的です

水毒に血虚がともなうケースもあります
この場合は当帰芍薬散が処方されます
当帰と芍薬で血を補い、茯苓と沢瀉で水毒を改善します

養生・セルフケア

過ごし方
陽虚の人は、冬に冷えがすすんでしまうので、夏のうちから冷えないように過ごしましょう

漢方では太陽をエネルギーととらえ、夏に太陽を浴びることで元気になると考えます
冷房のきいた室内で心地よい涼しさばかりを求めずに、多少暑くても日光を浴びて陽を補うことが必要です
夏に熱量を補うことなく、秋・冬に突入するのはNGです

また、冬に寒さに負けて、かぜばかりひいていると、ますます陽虚はすすみます
冬は体を守りながら、無理をしないで過ごすことが大切です

夜に活動することも体を冷えやすくします
血虚にもなりやすくなるので、血虚による冷え性の人は、夜は早く寝るように心がけましょう

食べもの
中国では暑い季節でも、氷を入れた飲みものなど、冷たいものはあまり飲む習慣がありません
冬でもつめたいものを好む人が増えていますが、陽虚の人はどんどん体が冷えやすくなり、むくみやすくもなるので注意しましょう

体を温める作用の強い羊肉や、ネギ、ニラ、ニンニク、ショウガ、トウガラシなど、体を温める食材を積極的に食生活にとり入れましょう

【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎

(この記事は、ラブすぽの記事で作りました)

漢方などでは、陽と陰、気や水の巡りを重視します

陽と陰のバランスを考え、その人に合った体質で治療します

また気の巡り、水の巡りが悪かったら改善します

適度の水分補給は重要ですが、水分の停滞などの水毒も注意





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その人個人の「体質」に合わせ治療する漢方
心身一体の医学
生薬と漢方薬を紹介する事典
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2024年12月27日

紂王と妲己が繰り広げた「酒池肉林」の世界とは?

暴君として名高い紂王

紂王(ちゅうおう)は、中国史上最も悪名高い暴君として知られる人物である

彼は殷王朝(紀元前16世紀頃 〜紀元前1046年)の最後の王であり、その統治は殷王朝の滅亡を招き、周王朝の成立へと繋がった

「紂王」という呼び名は、後世の評価を反映したものであり、「紂」という字には混乱や暴君を象徴する否定的な意味が含まれている。彼の父は帝乙(ていいつ)で、殷王朝第29代の王であった。

紂王は幼少期から文武両道に優れ、非常に聡明だった。
詩文や議論に秀でていただけでなく、体力や戦闘能力にも優れていたという。

王族として高度な教育を受けて育った彼の若い頃の姿は、『史記』などの史料においては「有能な指導者」として描かれている
また、多くの戦争で勝利を収めたとされ、その強さと勇気から「殷王朝最強の君主」と評されることもあった

紂王には非常に強いカリスマ性があり、人々を引きつける力があったとされる

ここまでを見る限り、紂王は優れた資質を持つ非常に有能な王のように思える

では、なぜ彼が「暴君」として語られるようになったのだろうか

紂王の自己中心的すぎる性格

紂王が第30代王として即位した時代は、殷王朝の政治体制が一定の安定を保っており、治世の初期は順調に進んでいたとされる

紂王は非常に高い能力を持っていたが、その反面、自信過剰であった。

他者の意見を聞き入れる姿勢に欠け、独断的だったとされる

帝紂資辨捷疾,聞見甚敏;材力過人,手格猛獸;知足以距諫,言足以飾非;矜人臣以能,高天下以聲,以為皆出己之下

意訳 :
帝紂(ていちゅう)は弁舌が鋭く敏捷で、見聞に非常に優れていた。また、尋常ならざる身体能力を持ち、猛獣を素手で倒すことができた。彼は自らの知恵で諫言を退け、巧みな言葉で過ちを取り繕った。臣下に対しては自分の才能を誇示し、天下にその名声を響かせ、自分より優れた者はいないと考えた。

引用 : 『史記』殷本紀

この自己過信が彼の治世における弱点となり、政治は次第に混乱し、殷王朝の基盤を崩壊させる原因となっていったのである

酒池肉林

「酒池肉林」という言葉は有名だが、この言葉は紂王が酒で池を満たし、肉を吊るした林で宴を開いた逸話に由来している

彼は大規模な人工の池を造り、この池に酒を満たした

池は『酒池』と名付けられ、招かれた客人たちは好きなだけ酒を飲むことができた

また、周囲には『肉林』と呼ばれる肉を吊るした木々が設置され、客人たちは自由にそれを取って食事も楽しんだ

さらに宴会の余興として、裸の男女が酒池や肉林の間を走り回り、客人たちはこれを見て歓声を上げたという

大聚樂戲於沙丘,以酒為池,縣肉為林,使男女裸相逐其閒,為長夜之飲。

意訳 :
紂王は沙丘という場所で大規模な宴会を開き、酒を池に満たし、肉を木に吊るして林を作った。そして、男女を裸にしてその間を戯れさせ、夜通しの宴会を楽しんだ。
引用 :『史記』巻三「殷本紀」より。

この「酒池肉林」の宴会には、単なる快楽追求以外の目的もあったと考えられている

一説には、紂王がこの贅沢な場を用いて、自らの財力や権力を臣下や国民に誇示する意図があったとされる
彼の行為は、贅沢の頂点を極めると同時に、支配者としての威厳を示す手段でもあったのだ

紂王の「酒池肉林」は、後世の人々にとって「暴君の象徴」として教訓的な逸話として語り継がれている

紂王が愛した悪女・妲己(だっき)

さらに紂王には、特別に愛した妾の妲己(だっき)がいた

彼女は美貌で紂王を魅了し堕落させ、殷王朝滅亡の原因を作った悪女として知られる

その性格は残虐で邪悪だったとされ、特に民衆を苦しめることに喜びを見出した
妲己は囚人に過酷な刑罰を課し、その苦しみや悲鳴を心地良い音楽のように楽しんだという

妲己の提案によって作られた刑罰には、「炮烙(ほうらく)」という恐ろしいものがあった

炭火の上に油を塗った銅柱を渡し、その上を罪人に歩かせ、足を滑らさせて火中に落ちるのを楽しむのである
その苦しむ姿を見て妲己は大笑いしていたとされる

紂王は、この美しく残忍な妲己に深く心を奪われており、政治や軍事よりも彼女を優先した

次第に紂王は理性を失い、国家運営を顧みなくなった。

こうして国は乱れ、民は疲弊し、結果として殷王朝の滅亡へとつながったのである。

紂王がもたらした殷王朝の崩壊

紂王の統治は、暴政や贅沢三昧だけでなく、内部の腐敗と外部の圧力によって崩壊していった

紂王が行った重税政策や厳しい刑罰は、国内の民衆を苦しめ、各地の不満を高めた
その結果、周囲の諸侯は次第に離反し、殷の支配は弱体化していった

加えて、紂王は軍事的な失策も重ねた

紀元前11世紀頃に起こった「牧野の戦い(ぼくやのたたかい)」では、周の武王率いる連合軍に対抗すべく兵を集めたものの、士気は低く、多くの兵が戦場で裏切ったと言われている
これは紂王の暴君としての行いが、兵士や民の忠誠を失わせた結果であった

牧野の戦いで大敗を喫した紂王は、殷の都・朝歌(ちょうか)に逃げ帰ると、追い詰められた末に鹿台で自ら命を絶ったと伝えられる

この時、彼は自らが身に纏っていた豪華な玉衣に火を放ち、その壮絶な最期は、彼の栄華と贅沢な生涯を象徴するものだった

こうして、約600年の歴史を誇った殷王朝は終焉を迎え、新たに周王朝の時代へと幕が開けたのである

紂王は、本当に暴君だったのか?

紂王(帝辛)の評価は、後世の歴史書や物語の影響を大きく受けている

その悪評は、殷を滅ぼした周王朝が、自身の正当性を確立するために強調した可能性もあるという

実際、『論語』において孔子の弟子・子貢は「殷の紂王の悪行は、世間で言われているほどではなかっただろう」と述べており、彼の悪名に対して疑問を呈している

「酒池肉林」や「炮烙」のような伝説的な逸話も、後世に脚色されたものが多いとされる

例えば「酒池肉林」は、実際には神を降ろすための儀式であった可能性も指摘されている
また「炮烙」は、単なる焼肉用の設備だったという説もあり、『韓非子』や『史記』に記述される中で解釈が変容し、残酷な刑罰として伝わったとも考えられている

さらに、紂王と同様に暴君とされる「夏の桀王」との逸話の類似性からも、後世における物語の脚色が推測される
両者とも「美女に溺れ、贅沢を極めた末に滅亡した」という、同じ筋書きなのだ

殷墟から発見された甲骨文の記録には、紂王や妲己に関する直接的な記述が見られず、これもまた実像に対する多くの疑問を生じさせている

紂王の治世をどのように捉えるべきかは、単なる暴君の物語として片付けるのではなく、歴史的背景や政治的意図を踏まえた上で、慎重に検討する必要があるだろう

紂王の物語は、後世の権力者への警鐘として語り継がれてきた
しかし、その教訓的な一面の背後には、時代を超えた複雑な歴史の影響が潜んでいることを忘れてはならない

参考 : 『史記』『論語』他
文 / 草の実堂編集部

(この記事は、草の実堂の記事で作りました)

「酒池肉林」や「炮烙」のような伝説的な逸話などがあったなら紂王と妲己は暴君、悪女だ

しかし歴史書は次の王朝によって書かれてきた

真実かもしれないが、誇張かもしれない




殷 - 中国史最古の王朝 (中公新書 2303) 新書

中国最古の王朝・殷
中国王朝の歴史はここから始まった
「酒池肉林」や「炮烙」の紂王と妲己が殷を破壊したとされる
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NY株は5営業日続伸、日経平均株価は大幅続伸

26日(現地時間)のNY株(ダウ平均株価)は、5営業日続伸し、終値は前日比28ドル77セント高の4万3325ドル80セント

ハイテク株中心のナスダックは1雄。77ポイント安の2万0020.36

S&P500は2.45ポイント安の6037.59




26日(日本時間)の日経平均株価は続伸し、終値は前日比437円63銭高の3万9568円06銭


(この記事は、ネットニュースの記事で作りました)

26日の日経平均株価の終値は前日比430円超の大幅上昇

posted by june at 06:54| Comment(0) | 株価動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

人種によって肌や目、髪の毛の色はなぜ違うのか?

メラニン色素と人類の進化による環境の変化

ヒトの肌や毛髪、瞳の色の違いは「メラニン(色素)」によって決まり、この色素を多く含む順に、毛髪の色は黒・金(ブロンド)・白髪となり、肌の色も黒・黄・白となります

メラニン色素の量が人種によって違うのは紫外線が関係しているといわれています
日射量の多い地域や日照時間の長い地域では、太陽光に含まれる有害な紫外線から肌や髪・目を守るためにメラニン色素が大量につくられます

日に焼けた後、何日かすると肌が黒くなりますが、これはメラニン色素が増えた証拠で、紫外線から一時的に細胞を守る反応でもあります

また、私たちがふだん人の〝瞳の色〟として認識しているのは、「瞳孔(黒目)」のまわりにある「虹彩」の部分です
この虹彩の色を決めているのもメラニン色素です

メラニン色素が多いと光の波長が吸収されて虹彩の色は濃くなり、瞳は黒や茶に見えます
反対に日射量の少ないヨーロッパでは、メラニン色素が少ないため光の波長が吸収されずに反射して、ブルーやグリーンのような明るい色になります

瞳の色が薄いと光を通しやすく、眩まぶしさを感じやすくなります
欧米人がよくサングラスをかけているのは、単なるファッションではなく、メラニン色素が少なく光に敏感なためでもあります

肌や髪、瞳の色の違いは、基本的には人類の進化から生まれました
強烈な紫外線が降り注そそぐアフリカの人々は発がん作用の防御のためにメラニン色素を多く含む黒色の皮膚を手に入れ、日光照射量の少ない欧米ではメラニン色素の量を減らすなど、地域の環境に順応してきた歴史が長い年月でいろいろな人種を生んだのです

出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志

(この記事は、ラブすぽの記事で作りました)

ヒトの肌や毛髪、瞳の色の違いは「メラニン(色素)」によって決まります

瞳の色が薄いと光を通しやすく、眩まぶしさを感じやすくなります
欧米人がよくサングラスをかけているのは、単なるファッションではなく、メラニン色素が少なく光に敏感なためでもあります

肌や髪、瞳の色の違いは、基本的には人類の進化から生まれました
強烈な紫外線が降り注そそぐアフリカの人々は発がん作用の防御のためにメラニン色素を多く含む黒色の皮膚を手に入れ、日光照射量の少ない欧米ではメラニン色素の量を減らすなど、地域の環境に順応してきた歴史が長い年月でいろいろな人種を生んだのです

人種によって肌や目、髪の毛の色はなぜ違うのはこのためです





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人体の不思議について図解で分かりやすく解説
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2024年12月26日

『ブラジルの知られざる妖怪たち』ラテンの国の神話と伝説

ブラジルといえば、ラテンのリズムで血湧き肉躍る、情熱的な国という印象が強いだろう

かつてブラジルは、先住民族インディオたちが暮らす土地であったが、16世紀頃にポルトガルの植民地となり、インディオ独自の文化は破壊され尽くされた

とはいえ、完全に消滅したわけではなく、わずかに生き残った先住民族の文化は、入植者である白人の文化や、奴隷として連れてこられた黒人の文化などと融合し、極めて多彩な文化として再構築された

その影響は、神話や幻想の世界にも及んでおり、異なる地域や民族の伝承が融合し、ブラジル独自の妖怪や怪物の伝説が数多く生まれたのである

そんな個性あふれるブラジルの妖怪や伝説ついて紹介したい

1.ベスタフェラ

ベスタフェラ(Besta-fera)とは、ブラジル独自のケンタウロスである

ケンタウロスとはご存知の通り、ギリシャ神話に登場する半人半馬の怪物のことだ
白人の入植と共に持ち込まれたケンタウロスの伝承が、次第に独自の形へと変化し、ベスタフェラの伝説が生まれたと考えられている

その姿は、ギリシャのケンタウロスと基本的には同じだが、ベスタフェラはより悪魔的な様相を呈しているとされる

普段は地獄に生息しているが、満月の夜になると地上に現れ、おぞましい咆哮を上げながら走りまわるという
もし人間がベスタフェラの顔を見てしまえば、数日間は気が狂ってしまうそうだ

森を駆け抜け、道すがら動物たちを鞭で叩きまわしたベスタフェラは、最後は墓石(または赤い花)に吸い込まれるように入っていき、地獄へ帰るのだという

2.ムーラ・セン・カベッサ

ムーラ・セン・カベッサ(Mula sem cabeca)とは、首の無いラバの怪異である
(ラバとはロバと馬の合いの子のことを指す)

その名はポルトガル語で「首無しラバ」を意味する

本来、頭部があるべき場所からは炎が上がり、口だと思しき箇所に手綱が結ばれているとされる

奇妙にもこの妖怪ラバは、頭部がないにもかかわらず、ラバ特有のいななき声を発することがあるそうだ
それだけではなく、稀に女のすすり泣くような声も上げるという

伝承によると、元々ムーラ・セン・カベッサは人間の女であったが、あまりにも性に奔放だったがために、神罰を受けて怪物の姿に変じたとされている

つまり、人間だったころの記憶と、現在の醜悪な姿とのギャップにむせび泣いているのだ

ムーラ・セン・カベッサは、木曜日の夜~金曜日の朝にかけて出現するとされる
7つの教区(キリスト教の司祭が管轄する地域)を疾走し、もし前を横切る者がいれば全力で追いかけ、踏む・蹴るなどの暴行を加えるという
ラバは比較的大柄な動物のため、踏まれれば致命傷を負う可能性は高い

この妖怪に狙われた際の対処法は、口部に結ばれた手綱を解くことである
そうすることでムーラ・セン・カベッサは呪いから解放され、人間の姿に戻るとされる

本来の姿を取り戻した彼女は改心し、あわよくばそのまま結婚することも可能だという。
ただし、外した手綱をもう一度口に咥えさせると、再び首なしラバの姿に戻り暴れ回るので、注意が必要とのことだ。

ムーラ・セン・カベッサのルーツはヨーロッパにあるとされ、スペインのラバ女「ムラドナ」や、アイルランドの首無し妖精「デュラハン」などが元ネタの候補として挙げられる。

3.キブンゴ

キブンゴ(Quibungo)とは、ブラジル北東部バイーア州に伝わる怪獣である

その姿は猿に似ているが、最大の特徴は背中にある袋状の巨大な口だ

キブンゴは邪悪な人食い怪物であり、特に子供を好んで食べるという
しかし、すぐ食べるようなことはせず、背中の口に子供を放り込み閉じ込め、巣に持ち帰ってからじっくり味わって食べる習性を持つとされる

ただ、キブンゴ自体はそこまで強くない魔物であるため、武装した大人の手によって、子供が救出されることも良くあるそうだ
特に近代兵器には弱く、銃があれば簡単に退治することができるという

この怪物のルーツはアフリカにあるとされ、黒人奴隷によってブラジルに持ち込まれた伝承であると考えられている

4.ダスザ

ダスザは、風の魔人である

日本の怪奇作家・中岡俊哉の著書「世界の魔術・妖術」においてのみ、存在が言及されている

その姿はまさに異形で、頭に巻き付く二匹のヘビ、巨大な単眼、耳まで裂けた口、そして4つの鼻の穴を持つという、恐ろしい容貌をしている

ダスザはこの4つの鼻から発する猛烈な鼻息と、手に持った羽根から放つ旋風により、木々をなぎ倒すほどの大規模な嵐を引き起こす

ブラジル北部の、とある山の西側の谷間に、高さ約3mの石造りピラミッドが建っており、その頂にダスザの像は祀られているという
人々はダスザを鎮めるために、毎月一頭の牛を、この像に捧げていたとされる

ある少年が悪戯心から、このダスザ像に向かって矢を放ったところ、突然吹き荒れた強風により空高く吹き飛ばされたという伝承もあり、ダスザの恐ろしさを物語る逸話として語り継がれている

参考 : 『世界の魔術・妖術』『妖怪・魔神・精霊の世界』『ファンタジィ図鑑』他
文 /草の実堂編集部

(この記事は、草の実堂の記事で作りました)

わずかに生き残った先住民族の文化は、入植者である白人の文化や、奴隷として連れてこられた黒人の文化などと融合し、極めて多彩な文化として再構築された

その影響は、神話や幻想の世界にも及んでおり、異なる地域や民族の伝承が融合し、ブラジル独自の妖怪や怪物の伝説が数多く生まれたのである

ブラジル独自の妖怪や怪物の伝説が育まれた




世界怪奇スリラー全集 (1)世界の魔術・妖術 単行本

中岡俊哉氏は妖怪マンガの水木しげる氏以前に「世界の魔人」を紹介した先駆け・先駆者
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