2024年11月03日

【見られたら即死?】邪眼を持つ怪物たちの神話・伝承

「邪眼」というものをご存知だろうか

邪視、または魔眼ともいわれるこの能力は、視線だけで対象に呪いをかけ、時には死に至らしめる恐ろしい力を持つとされている

現実にそのような能力を持つ存在がいるかどうかは別として、神話や幻想の世界では邪眼は非常にポピュラーな存在であり、多くの伝承が登場する

そんな強力な視線を持つ邪眼の使い手たちを紹介する


1. バジリスク

バジリスク(Basilik)は、ヨーロッパで恐れられた伝説的な爬虫類であり、その名はギリシア語で「小さな王」を意味する

古代ローマ帝国の学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスが記した百科事典「博物誌」にて、バジリスクは以下のように言及されている

(意訳・要約)

バジリスクはキレナイカ(リビア東部)原産のヘビであり、体長は12cmにも満たない
頭には王冠のように白い斑模様があり、体を曲げることなく直進し、音を鳴らすだけで他のヘビは一目散に逃げだす
その風格はまるで、覇道を進む王者のようである
バジリスクは、全身に致死的な毒を有しており、息を吐けば草木が枯れ、石が砕け散る
騎兵がこのヘビを槍で突けば、毒が槍を伝って兵も馬も死ぬ

さらにバジリスクはその視線にすら毒があり、見られた生物は絶命する。
唯一の天敵はイタチであり、その悪臭でバジリスクは死ぬが、イタチもまた死ぬ。

まさに死そのものを具現化した怪物であり、もしイタチの存在がなければ、人類は絶滅していたかもしれない

ただし、仮にこの生物が実在していたとしても、その目撃者はかなりの確率で命を落としているはずであり、伝承が残っていること自体に疑問を呈する意見もある

2.ピロリスク

バジリスクに類似した幻獣として、コカトリス(Cokatrice)が挙げられるだろう

伝説によれば、雄鶏が産んだ卵(もちろん、雄鶏が卵を産むことはない)をヒキガエルが温めることでコカトリスが誕生するとされる
その姿は鶏とヘビを融合させたようなもので、バジリスクと同様に全身が毒を宿し、視線だけで他の生き物を殺す恐ろしい怪物として信じられていた

コカトリスの亜種ともいえる存在に、ピロリスク(Pyrolisk)がいる
見た目はコカトリスに似ているが、全体的に赤い羽毛を持ち、尾の先に一本の赤い羽根が生えていることが特徴とされる

ピロリスクには、バジリスクやコカトリスのような猛毒は備わっていない

変わりにその視線は、あらゆる生き物を焼死させるという、悍ましき力を有している
ピロリスクは極めて邪悪な性質を持ち、獲物をジワジワと焼き殺すことを好むという

このピロリスクは、世界初のロールプレイングゲーム「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に登場するオリジナルモンスターであり、古典的な伝承には存在しない

しかし、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」は現代ファンタジーに多大な影響を与え、その影響力は古の神話に匹敵すると言っても過言ではないだろう

このため、ピロリスクもまた、バジリスクやコカトリスに比肩する存在とされているのである

3.カトブレパス

カトブレパス(Catoblepas)は、エチオピア西部に生息すると信じられていた幻獣で、その姿はスイギュウに似ているが、非常に重い頭部を持ち、常にうなだれているという特徴を持つ

この怪物もまた、古代ローマの学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスが『博物誌』において言及している

(意訳・要約)

カトブレパスは、ナイル川の源流とされる架空の泉「ニグリス」の近くに棲む獣である
頭部が重いため、動きは鈍く、ほとんど地面に顔を伏せて過ごしている
しかし、バジリスク同様、カトブレパスの眼を見た者は即座に死ぬとされている
そのため、この怪物が鈍重であることは、人類にとって幸運なことであった

さらに、19世紀フランスの小説家ギュスターヴ・フローベールの『聖アントワーヌの誘惑』では、よりグロテスクなカトブレパスが描かれている

フローベールによれば、カトブレパスはスイギュウの体に豚の顔を持ち、首はまるで空っぽの腸のように細長く、頭を持ち上げることができない
そのため、転がるように移動し、地面に生えた毒草を食べて生きているが、誤って自分の脚を食べてしまうこともあるという

カトブレパスは、バジリスクのように致死性の眼を持つ恐ろしい存在だが、その鈍重さや滑稽な動作が、より奇妙で不気味な印象を与える怪物である

4.ネラプシ

ネラプシ(Nelapsi)は、スロバキア東部ゼムプリン地方に伝わる吸血鬼の一種である

東ヨーロッパ各地には、「死者が吸血鬼として蘇る」という数多くの伝承が残されているが、ネラプシはその中でも特に危険な吸血鬼として語り継がれている

ネラプシになる条件として、二つの旋毛(つむじ)を持つ者は死後、ネラプシになる可能性があると信じられていた

吸血鬼が二つの心臓を持つという伝承は東ヨーロッパで一般的だが、ネラプシはさらに二つの魂を持つとされ、退治するのが極めて難しいとされている
また、死体でありながら死後硬直がなく、柔軟で優れた身体能力を持っているという特徴もある

ネラプシは吸血鬼として、人間の生き血を好むが、血を吸うだけにとどまらず、殺戮そのものを楽しむという極めて邪悪な性質を持っている
また、彼らには視線だけで生物を抹殺する能力があり、高台に登って広範囲を見渡すことで、一瞬にして多数の命を奪うことができるとされている

このようにネラプシは、吸血鬼の中でも際立って恐ろしい存在とされている

終わりに

視線だけで命を奪う「邪眼」は、世界各地において制御不能な恐怖を具現化した存在として、現代に至るまで語り継がれている

これらの怪物たちは、見えざる力への畏怖と、それにどう対処するかという人間の深層心理を反映していると言えよう

参考 : 『博物誌』『幻獣辞典』『神魔精妖名辞典』他
文 / 草の実堂編集部

(この記事は、草の実堂の記事で作りました)

視線だけで命を奪う「邪眼」は、世界各地において制御不能な恐怖を具現化した存在として、現代に至るまで語り継がれている

これらの怪物は、出会いたくないですし、恐ろしいですね


参考記事
出会ったら確実に死ぬ、致死率100%の妖怪伝承



幻獣辞典 (河出文庫) 文庫

想像上の生き物や小説などの不思議なものを紹介
いわゆる「幻獣」の辞典
posted by june at 12:28| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大河の近くで文明が誕生・発展する理由とは?

中国悠久の歴史を支えたふたつの大河

「世界四大文明」は、いずれも大河のほとりで生まれました
中国の黄河文明もそのひとつです
ここでは中国を例に挙げて大河と文明の関係を解説します

日本や中国では四大文明と表現されますが、国際的には「文明のゆりかご」ともいわれ、そこでは四大文明のほかにもさまざまな文明発祥の地が挙げられています
そして、そのなかに中国の長江(揚子江)から起こった長江文明が含まれているのです

現在、長江文明は黄河文明より先に生じたとする研究もありますが、いずれにしても中国を代表するふたつの大河が文明のゆりかごとなったのは確かでしょう

中国は、東部に広い平野を持っています
風や雨の浸食を受けたなだらかな大地に沿って、大河が下流へと土砂を押し流してできたものです
平野は農業に適した地形なので、ここに人々が定住し、国を形成していきました
広大な平野は、都市を築き、これを拡大していくのにも適していたわけです

7世紀には、ふたつの大河を結ぶ運河もできました
龍にたとえられることもある黄河と長江、そして各地に延びる多数の運河により発達した水運は、昔も今も人々の移動と物流を支える重要なインフラなのです

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』

(この記事は、ラブすぽの記事で作りました)

大河の近くで文明が誕生・発展する理由は、物流、移動に適しているからだと思います

例えば日本の首都・東京には利根川があり(、さらに荒川も流れてい)ます




眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話: 地理を知れば世界の仕組みとお金の流れが見えてくる! 単行本

地理は政治だけでなく経済にも関わってきます
地理から経済が見えてきます
posted by june at 04:34| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする