聴覚文化論・音楽社会史を専門分野とする渡辺裕さんによる選書『校歌斉唱! ―日本人が育んだ学校文化の謎―』(新潮社)が刊行された
校歌こそは、時代を映す音楽の機微を最も体現しているジャンルである――このような視座から、全国の校歌やその歌われ方を分析した本作の読みどころとは?
音楽学者の細川周平さんによる書評を紹介する。
細川周平・評「学校祝歌が歌われる現場、歌う人の思いを解き明かす」
『校歌斉唱!』渡辺裕[著](新潮社)
うまいタイトルだ
校歌斉唱!
校庭の全校生徒を前に、そのものずばりのアナウンスが聞こえてくるかのようだ
歌は学校ごとに違っても、この斉唱の儀式は全国一律で、入学式や運動会の一部を成している
校歌は自分たちで斉唱するのが標準で、独唱や他校の歌の鑑賞は特別な場面に限られる
甲子園はよその校歌をまとめて聴く機会の代表で、歌詞は教訓的、旋律は学校唱歌の定型、どれも似ているのを皆知っている
在学中はただ歌わされるだけだったのが、卒業後は青春譜として旧友と歌って笑い泣く
同窓会のお決まりだ
幸か不幸か、ふだん忘れているくせに気持ちを高める効果がある
渡辺裕らしいテーマで、一部で待望されていた
十四年前、『歌う国民』(中公新書)で、みんなで歌う/歌わされる集団の代表歌、「コミュニティ・ソング」の概念を立て、副題に並べた三点セット――唱歌、校歌、うたごえ――から、洋楽受容の忘れられた一面に光をあてたときには、仕事の順序として、斉唱文化の基本を作った第一ポイント、唱歌が中心だった
本書はその続きで第二ポイント、研究上ほとんどさら地の校歌に絞って、教室の唱歌斉唱に始まる明治の音楽史が、今日も続くことを論じている
学生が集って歌う学生歌は世界中にあっても、これほど強制力を持った公式的学校歌は日本固有なのだそうだ
第1章は『歌う国民』の復習で、コミュニティ・ソングの概念で校歌を見直したうえで、本書の副題「学校文化」に進む
これは教育学の正統なテーマ――教室、教材、授業、師弟関係――の外で、学校コミュニティがつくりだす文化を指す(四一ページ)
校歌もそのひとつで、上からの統制と下からの反応の両観点を本書全体で行き来する
生徒がただ歌わされるばかりでなく、自らを、自分たちを、声を合わせて、楽譜や制定者の意図や歌唱技術の向こうに飛び出す場面がある
校歌を歌い破るのだ
芸術歌曲扱いされてきた例外的校歌を対照例に、音楽的質よりも斉唱の近代日本史をたどる
第2章は明治から大正にかけて、既存の軍歌・唱歌の替え歌を校歌と定めたり、「旧校歌」と呼ばれている戦前の中学校の例をまとめている
当初、学校の代表歌の存在理由が現在ほど厳密ではなかった
旧制中学・高校の替え歌式の応援歌は、共通の原曲に別の歌詞をつけ、学校ごとの誇りと全体として同胞エリート意識を鼓舞した
下からの校歌のような面がある
今日、校歌と応援歌を保存する有力な組織として、卒業生有志による校友会に踏み込んでいるのは、渡辺の考える学校文化研究の好例と言える
校歌の制作場面については、須田珠生『校歌の誕生』(人文書院)が明治以来、市町村と校長がしかるべき作者に委嘱し、文部省が認可してきた点を初めて明らかにした
校歌は地域・年齢・性別が非常に限定的で、毎年入れ替わる歌い手集団のために学校ごとに定められ、愛校心育成が期待された
官庁公文書を読んだ須田に対して、渡辺は二十校近い学校新聞を古書店で入手するなどして読み、生徒の思いを論につづっている
第3章は戦前の皇国思想の校歌をめぐって、昭和二十年代に各地で起こった廃止改良論争をまとめている
根気のいる作業で、国をあげての民主化に校歌も乗っていたことを論証する
第4章は戦後の改訂版や新設校の例、ポピュラー系の作者による実作例を紹介しつつ、戦前との断絶よりも連続をタイトルの「生き延びる校歌」に圧縮している
歌詞と曲想は今風になっても、明治の定型が生き延びてい
第一、校歌なしの学校はありえない
明治のままだ
最近の市町村合併や学校の統廃合の影響も紹介されている
そのため新曲の陰に廃曲もある
第5章は高校野球を具体例に、対外戦でミニ国歌のように歌われる場面に着目している
バンカラは戦前の学生文化の時代遅れを意識した演技で、ブラバン編曲とぴたり合って、良きあの頃の応援部を再現している
第6章は反対に、埼玉のある高校で歌いやすいテンポを許容し、学校祭の定番として、卒業生や地元民によって愛唱されていることを報告している
地域の歌、能動的な歌い手という明るい話題で一冊を閉じているのは、前著に通じる渡辺好みだ
渡辺本のだいご味は多数の、既に選び抜かれた具体例をうまく抽象的な文化史枠に配して、目立たぬ学校祝歌の歌われる現場、歌う人の行為思惑を解き明かしている点にある。実例の展示会に終わらず、理論に走らず。読者は覚えている校歌をネット検索すると、発見があるだろう。制作の年代、定型性、歌詞内容のタイプ分類や作詞作曲者ごとの個性没個性はこれから調べが進む
歌う国民シリーズの第三作として、次は「国歌斉唱!」を期待したい
[レビュアー]細川周平(音楽学者)
ほそかわ・しゅうへい
協力:新潮社 新潮社 波
Book Bang編集部
新潮社
(この記事は、ブックバンの記事で作りました)
校歌はいつの世でも歌い継がれている
時代にあった多少の変化・新しさがあっても、校歌の定型はあまり変わらない
個人的にはこれは偉大なマンネリズムだと思う
変わらないこと、普遍的、不変的な素晴らしさだと思う
校歌斉唱!:日本人が育んだ学校文化の謎 (新潮選書) 単行本(ソフトカバー)
校歌はある意味時代の影響を受けてきた
時代の要請で変化はしてきたが、一方え校歌の定型ああまり変わらなかった
普遍性・不変性の美を感じる
これが受け継がれ、歌い継がれるということか
2024年09月23日
犬はずっと昔から人と仲がよかった?
愛犬にとって最も身近な存在の飼い主さん
そんな飼い主さんのことをどれだけ愛しているのかは、科学的に読み解くこともできるのです
最新科学の研究をもとに獣医師の増田宏司先生が解説します
犬が人を愛するために進化する理由
犬は人と仲よくなるために、長い歴史のなかで人を理解する努力を重ねてきました
最近の研究では、飼い主さんの対人関係までも犬が理解できることがわかっています
犬が手を抜かずに人を愛してくれるのは、「人のそばにいることを楽しくて幸せなこと」と思ってくれているからなのでしょう
人と犬は氷河期から仲よしだった!?
2021年に発表された論文のなかで、人と犬の関係は氷河期から始まっているという説が挙げられました
人の食べきれない肉をオオカミに食べさせていたことでオオカミが家畜化し、犬へと変化していったのではないかと考えられています
人好きになるために遺伝子も変化!?
犬の遺伝子研究では、オオカミから犬に分化する過程で、2つの遺伝子に異変が生じたことがわかっています
この変化が犬を人好きにさせる要因のひとつになっていると考えられていて、人と犬がどのように親友となったのかの研究が進められています
「人とのふれあい」を食べ物以上に魅力的に思う犬も多い
ヴァージニア工科大学が行った実験の結果から、犬に「人とのふれあい」と「食べ物」のどちらかを選ばせると、「人とのふれあい」を優先する犬が少なくないことがわかりました
さらなる検証が必ですが、犬は人との触れ合いに魅力を感じているということなのでしょう
科学的に見ても犬が人を愛していることが分かりました
愛犬は飼い主さんが思う以上に、飼い主さんのことが大好きなのかもしれません
お話を伺った先生/増田宏司先生(獣医師 博士(獣医学) 東京農業大学農学部動物科学科(動物行動学研究室)教授)
参考/「いぬのきもち」2024年6月号『飼い主さんは想像以上に愛されています! 愛犬からの大好きアクションを読み解こう』
文/小崎華
(この記事は、いぬのきもちの記事で作りました)
イヌは、ヒトが飼った最初の動物といわれます
ヒトとの「つきあい」が最も長く関係も深く、強い友情、結びつきがあるといわれます
ペットとしてだけでなく、介助・介護、ヒトのヘルプなど「ヒトのパートナーのイヌも・・・
マンガでわかる犬のきもち 単行本(ソフトカバー)
可愛いマンガとともに、イヌの気持ち・本音を紹介・解説
イヌの気持ちがわかればイヌとさらに気持ちが通じる
そんな飼い主さんのことをどれだけ愛しているのかは、科学的に読み解くこともできるのです
最新科学の研究をもとに獣医師の増田宏司先生が解説します
犬が人を愛するために進化する理由
犬は人と仲よくなるために、長い歴史のなかで人を理解する努力を重ねてきました
最近の研究では、飼い主さんの対人関係までも犬が理解できることがわかっています
犬が手を抜かずに人を愛してくれるのは、「人のそばにいることを楽しくて幸せなこと」と思ってくれているからなのでしょう
人と犬は氷河期から仲よしだった!?
2021年に発表された論文のなかで、人と犬の関係は氷河期から始まっているという説が挙げられました
人の食べきれない肉をオオカミに食べさせていたことでオオカミが家畜化し、犬へと変化していったのではないかと考えられています
人好きになるために遺伝子も変化!?
犬の遺伝子研究では、オオカミから犬に分化する過程で、2つの遺伝子に異変が生じたことがわかっています
この変化が犬を人好きにさせる要因のひとつになっていると考えられていて、人と犬がどのように親友となったのかの研究が進められています
「人とのふれあい」を食べ物以上に魅力的に思う犬も多い
ヴァージニア工科大学が行った実験の結果から、犬に「人とのふれあい」と「食べ物」のどちらかを選ばせると、「人とのふれあい」を優先する犬が少なくないことがわかりました
さらなる検証が必ですが、犬は人との触れ合いに魅力を感じているということなのでしょう
科学的に見ても犬が人を愛していることが分かりました
愛犬は飼い主さんが思う以上に、飼い主さんのことが大好きなのかもしれません
お話を伺った先生/増田宏司先生(獣医師 博士(獣医学) 東京農業大学農学部動物科学科(動物行動学研究室)教授)
参考/「いぬのきもち」2024年6月号『飼い主さんは想像以上に愛されています! 愛犬からの大好きアクションを読み解こう』
文/小崎華
(この記事は、いぬのきもちの記事で作りました)
イヌは、ヒトが飼った最初の動物といわれます
ヒトとの「つきあい」が最も長く関係も深く、強い友情、結びつきがあるといわれます
ペットとしてだけでなく、介助・介護、ヒトのヘルプなど「ヒトのパートナーのイヌも・・・
マンガでわかる犬のきもち 単行本(ソフトカバー)
可愛いマンガとともに、イヌの気持ち・本音を紹介・解説
イヌの気持ちがわかればイヌとさらに気持ちが通じる
大相撲、秋場所は大の里が13勝2敗で2回目の優勝
22日に大相撲秋場所千秋楽が行われた
14日目に優勝を決めた関脇・大の里は、この日は、関脇・阿炎に敗れ13勝2敗
しかし小結・関脇で3場所で33勝以上の大関昇進の目安を上回り、さらに優勝で大の里の場所後の大関昇進が確実に
優勝
大の里 13勝2敗(2回目の優勝
三賞
殊勲賞 若隆景(初)
敢闘賞 大の里(3回目)、錦木(初)
技能賞 大の里(3回目)
大の里史上最速初優勝記念号(月刊「相撲」2024年7月号増刊) 雑誌
大の里の史上最速初優勝の「相撲」の記念号
14日目に優勝を決めた関脇・大の里は、この日は、関脇・阿炎に敗れ13勝2敗
しかし小結・関脇で3場所で33勝以上の大関昇進の目安を上回り、さらに優勝で大の里の場所後の大関昇進が確実に
優勝
大の里 13勝2敗(2回目の優勝
三賞
殊勲賞 若隆景(初)
敢闘賞 大の里(3回目)、錦木(初)
技能賞 大の里(3回目)
大の里史上最速初優勝記念号(月刊「相撲」2024年7月号増刊) 雑誌
大の里の史上最速初優勝の「相撲」の記念号
2024年09月22日
【応急処置の正解は?】身近な危険生物に襲われたときの対処法
家族でのレジャーや学校の遠足、移動教室などで自然の中に行ったとき、ハチやヘビなどの生き物に遭遇する可能性がある
刺されたり噛まれたりしないようにするのが一番だが、万が一攻撃された場合はどうしたらいいのだろうか
そんな身近な危険から身を守るための知識が楽しく学べる書籍、『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(ダイヤモンド社)が刊行された
本書の監修者のひとりで医師の西竜一先生に、「身近な危険生物に襲われたときの対処法」について聞いた(取材・構成 / 小川晶子)
● ハチに2回刺されたら「アナフィラキシー」になる?
――今年7月、遠足に行った保育園児9名がクロスズメバチに刺されて病院に搬送されたというニュースがありました。遠足等で森林に行くときはもちろんですが、私の住んでいるところは身近にスズメバチがけっこういるので気を付けなければと思っています。ハチに刺されて、もっとも怖いのはアナフィラキシーですよね?
西竜一先生(以下、西):そうです。重篤なアレルギー反応が「アナフィキラシー」で、食事でも起こりますが、ハチに刺された場合も起こります
――どんな症状が出るのですか?
西:蕁麻疹がでたり、呼吸が苦しくなったり、ヒューヒューと音が鳴ったりします。身体の様々な部分に炎症が起きて血管が開いてむくむわけですが、皮膚の血管が開けば蕁麻疹、口に近い上気道がむくむと窒息状態になり呼吸ができなくなりますし、より末梢の気管支なら喘息のような症状になります。全身の血管が開けば、血圧が下がってひどい場合は意識がなくなります。最悪な場合は心臓が停止します。
――怖いです・・・。ハチに刺されて、呼吸が苦しくなったらすぐに病院ですね。
西:呼吸が苦しい、意識が遠のくような症状の場合はすぐに救急車を呼んでください。ちなみに、アナフィラキシーは、アレルゲンがどういう経路で入って来たかによって発症(最悪の場合心停止)までの時間が変わります。食事の場合は30分程度かけて消化吸収されますが、ハチ毒の場合は皮膚からジワジワ広がるので15分くらいでしょう。静脈注射のように直接血液に入れれば数分です。
――『いのちをまもる図鑑』にもある通り、ハチに刺されたことがあって、抗体ができたあとに再びハチに刺されると、アナフィラキシーを起こすおそれがあるということですよね。ということは、刺されたのが2回目なら病院に行くべきですか?
西:2回目に必ずなるわけではないですよ。ハチに刺されたのが2回目だからと救急車を呼ぶ人もいるのですが、刺された部位の痛みだけで、他に何も症状が出ていなければ問題はありません。アレルギーですから、人によっていつ出るかはわからないんです。花粉症も同じですよね。
――2回目以降は毎回クジを引くようなものか・・・。刺されないようにするのが一番ですね。
● ニホンマムシに噛まれたら「近くの病院」に行く
――東京でもニホンマムシのような毒ヘビに遭遇したという話はときどき聞きます。毒ヘビに噛まれたときは、どうしたらいいですか?
西:ニホンマムシはチクっと噛んで去っていき、急激に大きな症状が出るわけではありません。でも、激しく腫れて、さらには血管や筋肉を溶かす毒を持っているので適切に処置をする必要があります。日本では毎年2000~3000人が噛まれ、そのうち10人ほどが亡くなっています。もし噛まれたら、あわてずに傷口を水で洗い流してください。そして、近くの病院に行くことです。
――毒ヘビは、生息地に近い病院でないと治療薬の準備がない場合があるということですよね?
西:そうです。地域特性のあるものは、その地域の人がよくわかっていますから。
病院に行くときは、走らないように気を付けてください。心臓がドキドキすると毒の回りが早くなってしまうんです。
● 毒は吸い出さなくていい
――なるほど、それは怖いですね。毒を口で吸い出してペッペッと出すみたいなのを漫画で見たことがありますが、それはダメですか?
西:おすすめしません。毒を吸い出す効果はあまり認められていませんし、口の傷から毒が入ったり、口の中の菌が傷から入ってしまうかもしれません。その場での処置としては傷口を水で洗うだけで良いでしょう。
――毒のある生き物に遭遇したら焦ってしまいそうですが、落ち着いて行動できるように知識を持っておきたいと思います。
西竜一(にし・りゅういち)
医師
公衆衛生学修士
救急科専門医
南町田病院救急科勤務
帝京大学医学部救急医学講座非常勤講師
帝京大学医学部卒業
救急医として日々あらゆる病気やケガの診察をし、災害時には被災地において医療活動を行う
救急・災害医療の知識を市民へわかりやすく伝える活動も行っている
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』(監修:池上彰、今泉忠明、国崎信江、西竜一 文:滝乃みわこ イラスト:五月女ケイ子、室木おすし マンガ:横山了一)に関連した書き下ろし記事です
(この記事は、DIAMOND onlineの記事で作りました)
身近には大きな危険が潜んでいる
夏休み中の危険もそうだが、夏休みが終わって秋イなってもレジャーで危険に遭遇する場合も
そうした場合、正しい応急処置が必要になる
いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル 単行本(ソフトカバー)
身近には危険がいっぱいだ
ハチに刺されたら、毒ヘビにかまれたら、クマに遭遇したら、目の前で溺れている人がいたら・・・など
ピンチでの対処法、応急処置を解説
刺されたり噛まれたりしないようにするのが一番だが、万が一攻撃された場合はどうしたらいいのだろうか
そんな身近な危険から身を守るための知識が楽しく学べる書籍、『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(ダイヤモンド社)が刊行された
本書の監修者のひとりで医師の西竜一先生に、「身近な危険生物に襲われたときの対処法」について聞いた(取材・構成 / 小川晶子)
● ハチに2回刺されたら「アナフィラキシー」になる?
――今年7月、遠足に行った保育園児9名がクロスズメバチに刺されて病院に搬送されたというニュースがありました。遠足等で森林に行くときはもちろんですが、私の住んでいるところは身近にスズメバチがけっこういるので気を付けなければと思っています。ハチに刺されて、もっとも怖いのはアナフィラキシーですよね?
西竜一先生(以下、西):そうです。重篤なアレルギー反応が「アナフィキラシー」で、食事でも起こりますが、ハチに刺された場合も起こります
――どんな症状が出るのですか?
西:蕁麻疹がでたり、呼吸が苦しくなったり、ヒューヒューと音が鳴ったりします。身体の様々な部分に炎症が起きて血管が開いてむくむわけですが、皮膚の血管が開けば蕁麻疹、口に近い上気道がむくむと窒息状態になり呼吸ができなくなりますし、より末梢の気管支なら喘息のような症状になります。全身の血管が開けば、血圧が下がってひどい場合は意識がなくなります。最悪な場合は心臓が停止します。
――怖いです・・・。ハチに刺されて、呼吸が苦しくなったらすぐに病院ですね。
西:呼吸が苦しい、意識が遠のくような症状の場合はすぐに救急車を呼んでください。ちなみに、アナフィラキシーは、アレルゲンがどういう経路で入って来たかによって発症(最悪の場合心停止)までの時間が変わります。食事の場合は30分程度かけて消化吸収されますが、ハチ毒の場合は皮膚からジワジワ広がるので15分くらいでしょう。静脈注射のように直接血液に入れれば数分です。
――『いのちをまもる図鑑』にもある通り、ハチに刺されたことがあって、抗体ができたあとに再びハチに刺されると、アナフィラキシーを起こすおそれがあるということですよね。ということは、刺されたのが2回目なら病院に行くべきですか?
西:2回目に必ずなるわけではないですよ。ハチに刺されたのが2回目だからと救急車を呼ぶ人もいるのですが、刺された部位の痛みだけで、他に何も症状が出ていなければ問題はありません。アレルギーですから、人によっていつ出るかはわからないんです。花粉症も同じですよね。
――2回目以降は毎回クジを引くようなものか・・・。刺されないようにするのが一番ですね。
● ニホンマムシに噛まれたら「近くの病院」に行く
――東京でもニホンマムシのような毒ヘビに遭遇したという話はときどき聞きます。毒ヘビに噛まれたときは、どうしたらいいですか?
西:ニホンマムシはチクっと噛んで去っていき、急激に大きな症状が出るわけではありません。でも、激しく腫れて、さらには血管や筋肉を溶かす毒を持っているので適切に処置をする必要があります。日本では毎年2000~3000人が噛まれ、そのうち10人ほどが亡くなっています。もし噛まれたら、あわてずに傷口を水で洗い流してください。そして、近くの病院に行くことです。
――毒ヘビは、生息地に近い病院でないと治療薬の準備がない場合があるということですよね?
西:そうです。地域特性のあるものは、その地域の人がよくわかっていますから。
病院に行くときは、走らないように気を付けてください。心臓がドキドキすると毒の回りが早くなってしまうんです。
● 毒は吸い出さなくていい
――なるほど、それは怖いですね。毒を口で吸い出してペッペッと出すみたいなのを漫画で見たことがありますが、それはダメですか?
西:おすすめしません。毒を吸い出す効果はあまり認められていませんし、口の傷から毒が入ったり、口の中の菌が傷から入ってしまうかもしれません。その場での処置としては傷口を水で洗うだけで良いでしょう。
――毒のある生き物に遭遇したら焦ってしまいそうですが、落ち着いて行動できるように知識を持っておきたいと思います。
西竜一(にし・りゅういち)
医師
公衆衛生学修士
救急科専門医
南町田病院救急科勤務
帝京大学医学部救急医学講座非常勤講師
帝京大学医学部卒業
救急医として日々あらゆる病気やケガの診察をし、災害時には被災地において医療活動を行う
救急・災害医療の知識を市民へわかりやすく伝える活動も行っている
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』(監修:池上彰、今泉忠明、国崎信江、西竜一 文:滝乃みわこ イラスト:五月女ケイ子、室木おすし マンガ:横山了一)に関連した書き下ろし記事です
(この記事は、DIAMOND onlineの記事で作りました)
身近には大きな危険が潜んでいる
夏休み中の危険もそうだが、夏休みが終わって秋イなってもレジャーで危険に遭遇する場合も
そうした場合、正しい応急処置が必要になる
いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル 単行本(ソフトカバー)
身近には危険がいっぱいだ
ハチに刺されたら、毒ヘビにかまれたら、クマに遭遇したら、目の前で溺れている人がいたら・・・など
ピンチでの対処法、応急処置を解説
「古代ローマの発明王・ヘロン」の定理「ピタゴラスをも凌駕する」
あの時代になぜそんな技術が!?
ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか?
現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さんによる、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』が同時刊行されました!
それを記念して、残念ながら新刊には収録できなかったエピソードを短期集中連載でお届けします
主人公は、生没年などが未詳なことから“神秘の発明王”の異名をとるヘロン
なんと2000年も前に「エンジン」や「自動ドア」を発明していたという彼の数学上の大功績「ヘロンの公式」を紹介しましょう!
“神秘の発明王”ヘロン
紀元前6世紀のピタゴラスにはじまり、デモクリトス、ヒッポクラテス、アリストテレス、アルキメデス、ストラトン、クテシビオス、ウィトゥルウィウスに引き継がれた紀元前の古代ギリシャ時代に確立されて、二千数百年を経た現在においても、数学、科学、技術、医学の分野で“現役”として活躍しているものは少なくない
古代ギリシャの偉大な師、先輩たちの業績を集約し、純粋数学、物理学分野の業績のみならず、さまざまな分野のさまざまな装置を発明したのがヘロンである
彼の時代にもし、現代の特許制度のようなものが存在したならば、ヘロンは幾百の特許権を所有し、“発明王”とよばれたことであろう
ヘロンの公式
ヘロンの生没年には諸説あり、よくわかっていない
一般に「クテシビオスの弟子」といわれているので、クテシビオスが生存した紀元前3世紀から紀元前2世紀以降の人物と考えられている
ただし、“弟子”といっても直弟子なのか孫弟子なのかがはっきりしないので、ここでは“紀元元年前後の人物”としておきたい
まず、ヘロンの数学分野における業績として、三角形の面積を求める「ヘロンの公式」を紹介しよう
「特殊」より「一般」が尊ばれる
三角形に関する定理として最も有名なのは、誰でも知っている「ピタゴラスの定理」であろう
直角三角形の三辺の長さをa、b、c(斜辺)としたとき、
a²+b²=c²
が成り立つというものである
式の形から「三平方の定理」ともよばれる
ヘロンの公式はピタゴラスの定理ほど有名ではないが、直角三角形のように特殊な三角形ではなく、一般的な三角形に関するものである
数学や物理学の分野では特殊なものよりも一般的なもののほうに価値がある
かのアインシュタインが「特殊相対性理論」から「一般相対性理論」の確立まで10年の歳月を費やしたのもそのためである
ヘロンの公式は、三辺の長さがa、b、cの任意の三角形の面積(T)は「s=(a+b+c)/2」とおけば、
T=√s(s-a)(s-b)(s-c)
で与えられるというものである
私は、ピタゴラスの定理やヘロンの公式のようなきわめて簡潔な式を見るたびに感動するのであるが、読者のみなさんはいかがであろうか
「証明」を明記したことで戴冠の栄誉に
ピタゴラスの定理の証明も決して簡単というわけではないが、ヘロンの公式の証明は三角比や余弦定理、因数分解を使わなければならず、少々やっかいである
じつは、「ヘロンの公式」そのものは、アルキメデスも、あるいはそれ以前のピタゴラスも知っていたのではないかという説もある
しかし、「証明」を著書『メトリカ』の中にはっきりと記述していることから、この公式に「ヘロン」の名が冠せられている
古代日本の超技術〈新装改訂版〉 古代世界の超技術〈改訂新版〉
(この記事は、現代ビジネスの記事で作りました)
ヘロンの公式は全ての三角形にあてはまり「一般的」で、その点では直角三角形限定の「特殊な」ピタゴラスの定理を凌駕しているといえる
特殊な条件にあてはまる特殊相対性理論をさらに進め、あらゆる一般的な条件にあてはまる一般相対性理論のように・・・
それにしても古代の超技術は凄いですね
古代日本の超技術〈新装改訂版〉 あっと驚く「古の匠」の智慧 (ブルーバックス) 新書
古代世界の超技術〈改訂新版〉 あっと驚く「巨石文明」の智慧 (ブルーバックス) 新書
ピラミッド、兵馬俑、五重塔など現代の先端技術でも作るのが難しいのに古代にこれらは作られています
人気のロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊
ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか?
現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さんによる、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』が同時刊行されました!
それを記念して、残念ながら新刊には収録できなかったエピソードを短期集中連載でお届けします
主人公は、生没年などが未詳なことから“神秘の発明王”の異名をとるヘロン
なんと2000年も前に「エンジン」や「自動ドア」を発明していたという彼の数学上の大功績「ヘロンの公式」を紹介しましょう!
“神秘の発明王”ヘロン
紀元前6世紀のピタゴラスにはじまり、デモクリトス、ヒッポクラテス、アリストテレス、アルキメデス、ストラトン、クテシビオス、ウィトゥルウィウスに引き継がれた紀元前の古代ギリシャ時代に確立されて、二千数百年を経た現在においても、数学、科学、技術、医学の分野で“現役”として活躍しているものは少なくない
古代ギリシャの偉大な師、先輩たちの業績を集約し、純粋数学、物理学分野の業績のみならず、さまざまな分野のさまざまな装置を発明したのがヘロンである
彼の時代にもし、現代の特許制度のようなものが存在したならば、ヘロンは幾百の特許権を所有し、“発明王”とよばれたことであろう
ヘロンの公式
ヘロンの生没年には諸説あり、よくわかっていない
一般に「クテシビオスの弟子」といわれているので、クテシビオスが生存した紀元前3世紀から紀元前2世紀以降の人物と考えられている
ただし、“弟子”といっても直弟子なのか孫弟子なのかがはっきりしないので、ここでは“紀元元年前後の人物”としておきたい
まず、ヘロンの数学分野における業績として、三角形の面積を求める「ヘロンの公式」を紹介しよう
「特殊」より「一般」が尊ばれる
三角形に関する定理として最も有名なのは、誰でも知っている「ピタゴラスの定理」であろう
直角三角形の三辺の長さをa、b、c(斜辺)としたとき、
a²+b²=c²
が成り立つというものである
式の形から「三平方の定理」ともよばれる
ヘロンの公式はピタゴラスの定理ほど有名ではないが、直角三角形のように特殊な三角形ではなく、一般的な三角形に関するものである
数学や物理学の分野では特殊なものよりも一般的なもののほうに価値がある
かのアインシュタインが「特殊相対性理論」から「一般相対性理論」の確立まで10年の歳月を費やしたのもそのためである
ヘロンの公式は、三辺の長さがa、b、cの任意の三角形の面積(T)は「s=(a+b+c)/2」とおけば、
T=√s(s-a)(s-b)(s-c)
で与えられるというものである
私は、ピタゴラスの定理やヘロンの公式のようなきわめて簡潔な式を見るたびに感動するのであるが、読者のみなさんはいかがであろうか
「証明」を明記したことで戴冠の栄誉に
ピタゴラスの定理の証明も決して簡単というわけではないが、ヘロンの公式の証明は三角比や余弦定理、因数分解を使わなければならず、少々やっかいである
じつは、「ヘロンの公式」そのものは、アルキメデスも、あるいはそれ以前のピタゴラスも知っていたのではないかという説もある
しかし、「証明」を著書『メトリカ』の中にはっきりと記述していることから、この公式に「ヘロン」の名が冠せられている
古代日本の超技術〈新装改訂版〉 古代世界の超技術〈改訂新版〉
(この記事は、現代ビジネスの記事で作りました)
ヘロンの公式は全ての三角形にあてはまり「一般的」で、その点では直角三角形限定の「特殊な」ピタゴラスの定理を凌駕しているといえる
特殊な条件にあてはまる特殊相対性理論をさらに進め、あらゆる一般的な条件にあてはまる一般相対性理論のように・・・
それにしても古代の超技術は凄いですね
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古代世界の超技術〈改訂新版〉 あっと驚く「巨石文明」の智慧 (ブルーバックス) 新書
ピラミッド、兵馬俑、五重塔など現代の先端技術でも作るのが難しいのに古代にこれらは作られています
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