2024年03月10日

天文学者も全く理解不能・・・銀河系外から飛来する未知のγ線信号が話題に

最近,ガンマ線が特に高強度でやってくる方向が存在することが判明しました

その方向は宇宙マイクロ波背景放射(Comic Microwave Background,CMB)が高強度でやってくる方向と一致すると理論的に予想されていましたが、実際はそれとは明確に異なっていました

むしろ、こちらも起源が不明である「超高エネルギー宇宙線」の到来頻度が高い方向と一致している可能性が高いことがわかりました

●宇宙マイクロ波背景放射(CMB)
宇宙マイクロ波背景放射(以下CMB)とは、宇宙の全方向からほぼ同じくらいの強度で地球にやってくる非常に弱いマイクロ波です

ではCMBの正体は一体何なのでしょうか?

結論から言うと、「宇宙最古の電磁波」となります

私たちの目にする可視光線(光)は、電磁波の一種です
電磁波は波長毎に呼び名が異なり、可視光線より波長が長いものには電波や赤外線、短いものには紫外線やX線、γ線などがあります
そしてマイクロ波は電波の一種です

宇宙が始まった直後、宇宙は人間の目ですら認識できないほど非常に小さく、超高温でした

その後急速に膨張し、温度が低下していきます

宇宙が始まったビッグバンの瞬間からしばらくは高温であるため、宇宙にある物質は原子核と電子がお互い離れて(電離して)自由に動き回る、プラズマの状態にあったと考えられています

宇宙初期の状態だと電磁波は、自由に動き回る電子と相互作用を起こすために、直進することができませんでした

そのため宇宙全体がもやや雲に包まれたように視界が開けていない状態が続いていたと考えられています。

宇宙誕生から約38万年経つと宇宙の温度は約3000度にまで下がり、自由電子が原子核と結びついて原子が構成され、ようやく空間を電磁波が直進できるようになりました

このように宇宙の誕生から約38万年後、直進できない電磁波で満たされていた宇宙全体が、直進できる電磁波で満ち溢れるようになった瞬間を、「宇宙の晴れ上がり」と呼んでいます

この宇宙の晴れ上がりの瞬間に宇宙空間を直進できるようになった最初の電磁波は、その後宇宙の膨張と共に波長が伸び、温度が低下しながらも宇宙空間を満たし続けています

現在の地球でも、宇宙の晴れ上がりの瞬間の最初の電磁波があらゆる方向から飛来する様子を観測することができます

つまりCMBの正体は、最初に直進できるようになった「宇宙最古の電磁波」ということになります

温度がある全ての物体は、その温度に応じた波長の電磁波を放っています

これは熱放射と呼ばれる現象です

人間の体温程度なら主に赤外線を放ちますが、さらに高温で数千度単位になるとより波長が短い可視光を主に放ちます

例えば1000度を超えるマグマは暗闇でも赤い光を放ちますし、表面温度が数千度の恒星も人間の目に見える光を放ちます

宇宙の温度が3000度の時に放たれた最初の電磁波は可視光線に相当する波長を持っていました

しかしその後宇宙の膨張と共に光の波長が伸び、現在では3K(-270度)の物体が熱放射で放つ電磁波とほぼ等しい、マイクロ波の形で地球に到達するようになっています

○CMBのゆらぎと双極子成分
CMBは太陽系に対して全方向からほぼ同等の強度でやってきますが、わずかに強度のゆらぎが存在します

その強度分布には、ある特定の方向が他に比べて高温で、その180度反対の方向が低温であるという、「双極子成分」が見られます

具体的には特に高温の領域だと平均より約0.12%高温で、それと反対の方向は同程度に低温となっています

この双極子成分の原因は、CMBが等方的に見える系に対して、太陽系が370km/sという速度で移動しているためであると考えられています

●ガンマ線に未知の高強度領域を発見
宇宙は非常にマクロなスケールで見ると等方的であり、CMB以外の電磁波でも、非常にマクロなスケールではCMB同様に宇宙を等方的に満たしていると考えられています

つまりマイクロ波以外の電磁波を観測しても、太陽系の運動由来の双極子成分が、方向や強度などが同様の特徴を持って現れると考えられていました

しかしそのような双極子成分は、これまでCMBでしか正確に観測されていませんでした

CMB以外の電磁波放射の双極子成分が、理論的な予想通りCMBの双極子成分と一致しているかどうかを調べることで、それらの双極子成分が本当に太陽系が移動しているために生じる現象なのか、あるいはその定説が間違っているのかを検証することができます

研究チームは、1日に何度も全天をスキャンする大面積の望遠鏡の長年にわたるデータを組み合わせることで、ガンマ線に関連する双極子成分を探りました

その結果、ガンマ線の双極子成分を発見できました

しかしその特徴は理論的な予想とは異なり、CMBの双極子成分とは明確に異なる特徴を持っていました

まず、そのピークはCMB双極子成分のピークがある方向とは明確にずれています

さらに強度についても、太陽系の運動によって生じると予想されるガンマ線の双極子成分の強度よりも10倍も大きいのです

そして興味深いことにガンマ線のピークは、宇宙から飛来する陽子などの超高エネルギー粒子である、「超高エネルギー宇宙線」のピークといくつかの共通点が存在しています

アルゼンチンの広大な草原地帯で超高エネルギー宇宙線の観測を行う「ピエールオージェ実験」により、超高エネルギー宇宙線の到来頻度にも双極子成分が発見されています。

今回の主題であるガンマ線の双極子成分と、オージェ実験で発見された超高エネルギー宇宙線の双極子成分の性質がよく似ているのです

具体的にはまず双極子成分同士の方向が近いです

さらに強度の面でも共通点があり、ガンマ線と最高エネルギー宇宙線のピークは、どちらも平均よりも7%エネルギーが高いことがわかっています

ガンマ線と超高エネルギー宇宙線の双極子成分はどちらも起源が不明ですが、何らかの関連がある可能性は考えられます

また、天の川銀河面からずれた方向にあることから、天の川銀河外が起源であると考えられます

ガンマ線や超高エネルギー宇宙線を高強度で地球に届けている天体の正体は一体何なのでしょうか?

今後の研究から目が離せません


https://svs.gsfc.nasa.gov/14476
https://astro-dic.jp/pierre-auger-project/

(この記事は、宇宙ヤバイchキャベチの記事で作りました)

宇宙は謎だらけというが、今回のように天文学者も全く理解不能の謎も出てくる

観測技術の進歩などによりそれでも宇宙の謎は解明されてきた

しかしある謎が解明されると新しい謎が出てくる

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宇宙研究・宇宙の謎に挑む最前線
人類はこの「果てしなき旅」に挑んでいる
posted by june at 13:11| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

天の川銀河すぐ隣で「未知の銀河」を新発見!?

天の川銀河から16万~20万光年ほど離れたすぐ隣に、大マゼラン雲と小マゼラン雲という2つの矮小銀河が存在しています

これらの天体は北半球に住む私たちにはあまり身近に感じられないかもしれませんが、南半球では肉眼ではっきりとこれらの銀河の存在を確認することができます

そんなマゼラン雲のうち、普段話題になることが多いのは大マゼラン雲の方ですが、今回は「小マゼラン雲」のお話です

なんとこの銀河の背後に、もう一つ未知の銀河が潜んでいる可能性が高いことが示されました

●小マゼラン雲
小マゼラン雲は、地球から約20万光年彼方にある矮小銀河です

諸説ありますが一般的には、その近くにある大マゼラン雲と共に天の川銀河を公転する、「伴銀河」の1つであると考えられています

そして小マゼラン雲は、研究対象としても非常に魅力的で、これまでも盛んな研究が行われてきた天体です

その理由としてはまず天の川銀河と距離が近く、個々の星や星間物質まで詳細に調べることができることが挙げられます

また、銀河に含まれる重元素の量が少ないという特徴があります

重元素は恒星の内部で形成されるので、恒星がまだあまり誕生したことがない宇宙初期には、重元素があまり存在していませんでした

よって重元素の量が少ない小マゼラン雲は、初期宇宙に存在していた銀河と性質が近く、小マゼラン雲の研究自体が、間接的に初期宇宙の銀河の理解に繋がるという点も、研究対象としての魅力です

そして小マゼラン雲は、謎多き天体でもあります
小マゼラン雲内のガスや恒星の運動の様子が非常に複雑で、単純な銀河のモデルでは説明できないのです

大マゼラン雲からの重力的な作用によって破壊されているという説がありますが、これらの謎を説明できる、SMCの性質を表した明確なモデルが求められてきました

●小マゼラン雲の背後にもう一つ銀河があった!?
そんな中2023年12月、小マゼラン雲が実は異なる進化を辿った2つの銀河が重なって存在している可能性を高める研究成果が発表され、大きな話題を呼んでいます

研究チームはまず小マゼラン雲内に存在する大質量星から地球にやってきた光を分析し、地球までの経路上に存在する星間物質による減光(星間減光)の度合いを求めました

これにより、大質量星までの距離を特定できます

つまり星間減光の度合いが大きければ、その前に多くの塵が存在し、恒星はより遠くにあると言えます

逆に星間減光度合いが小さければ塵が前方に少なく、恒星がより近い位置にあると言えます

さらに、「生まれたばかりの大質量星は、それが生まれたガス雲のすぐそばにあり、移動速度が似ている」という一般的な仮定のもと、大質量星とガス雲の移動速度を比較し、同じ領域に存在する星とガスを紐づけました

これにより恒星だけでなくガス雲を含めた、小マゼラン雲内の領域ごとの距離を理解できます

研究の結果、小マゼラン雲内に顕著に異なる性質を持つ2つの領域が存在している様子が浮かび上がりました

具体的にこれらの持つ異なる性質としては、まず距離が挙げられます

地球に近い方の領域は地球から約19.9万光年、遠い方の領域は約21.5万光年離れており、お互いが16000光年離れていることになります

さらに運動の仕方も異なり、地球に近い方の領域が遠い方の領域よりも速く動いていました

そして化学組成も異なり、近い方が遠い方より重元素の量が多く、分子雲も多く存在していました

これらの結果から、小マゼラン雲は実は単一の銀河ではなく、2つの銀河が視線の方向に重なって存在している可能性が高いと言えます

これらの銀河は似た質量を持っており、どちらも大マゼラン雲からの強い重力を受けていると見られます

仮に今回の研究結果が事実であれば、小マゼラン雲の奥に新たな銀河が出現し、さらに大マゼラン雲を含めたマゼラン雲が三つ子になることになります

ただし、小マゼラン雲の2つの銀河がもともと全く別の銀河で、偶然接近したものなのか、もしくは最初は1つの銀河だったのが大マゼラン雲のようなより大きな銀河との相互作用で引きはがされ、分裂したものなのか、その進化の歴史については疑問が残っています

より正確なことを知るために、追加の詳細な研究が必要であるとのことです


https://ar5iv.labs.arxiv.org/html/2312.07750
https://astrobites.org/2023/12/23/two-smcs-are-better-than-one/
https://astronomy.swin.edu.au/cosmos/i/interstellar+reddening
https://phys.org/news/2023-12-small-magellanic-cloud-smaller-galaxies.html
https://www.science.org/content/article/familiar-astronomical-object-may-be-two-galaxies-not-one
https://earthsky.org/space/small-magellanic-cloud-two-star-forming-structures/

(この記事は、宇宙ヤバイchキャベチの記事で作りました)

天の川銀河のすぐ隣で「未知の銀河」を新発見した可能性があるようです

この可能性は、今後のさらなる研究でわかるかもしれません

宇宙は次々と新発見の可能性や新たなる謎や疑問が出て、その意味で興味や関心などが尽きませんね

それでなくても宇宙は謎だらけといわれているのに

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宇宙にはいくつもの銀河があり、私たちの地球もその1つである「天の川銀河」にあります
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posted by june at 05:33| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする