最新最強の性能を持った「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡」(JWST)の超深宇宙探査により、誕生直後の宇宙で仮説上の天体である「ダークスター」を発見した可能性があると話題になっています
●JWSTの最新観測結果
ハッブル宇宙望遠鏡は高度約570kmを周回し、そこから宇宙を観測しているのに対し、JWSTは太陽-地球系の「ラグランジュ点2(L2」というところから観測を行います
ここは地球から150万kmほど離れた場所です
そこで様々な調節を済ませ、2022年7月から本格的な科学観測を始めることに成功しています
それ以来数々の偉大な新発見をもたらしています
特に超遠方の天体が宇宙誕生直後に放った光は、現在の地球に届くころには非常に微弱で観測困難になっているものの、JWSTの圧倒的な性能によりそのような超遠方の天体由来の光を観測し、様々な初期の宇宙の情報を得ることもできています
中でもJWSTによる深宇宙探査プログラム「JWST Advanced Deep EXtragalactic Survey(JADES)」により発見された3つの光源「JADES-GS-z13-0」「JADES-GS-z12-0J「JADES-GS-z11-0」は超初期宇宙に存在する銀河であると特定されていました
しかし今、テキサス大学オースティン校などの研究チームは、これらが実は「ダークスター」ではないかと推測しています
これらの光源から来た光の性質と、ダークスターが放つと理論的に予想されている光の性質は矛盾がないとのことです
●ダークスターとは?
そもそもダークスターとは、どのような天体なのでしょうか?
これは恒星のように自らの内部で生み出したエネルギーにより光輝く超巨大な天体であり、初期の宇宙でのみ存在した可能性のあるものの未発見の、仮説上の天体の一つです
○ダークスターの形成メカニズム
一般的に低温のガスが集まりガス雲ができ、さらに自身の重力で圧縮が続くと、ガス雲の中心部が徐々に高密度になります
中心部の温度と圧力があるレベルを超えると核融合反応が始まり、通常の恒星となります
しかし初期の宇宙ではダークマターが現在より高密度に存在していたため、通常の恒星になる前段階のガス雲にダークマターが含まれていたと考えられています
ダークマターの正体は不明ですが、未知の素粒子が有力候補です
未知の素粒子は「自身と同種の素粒子と衝突すると対消滅し、質量が100%エネルギーに変換される」という性質を持つ可能性があります
ダークマターの正体がそのような性質を持つ素粒子である場合、ガス雲に取り込まれるとガス雲内部で対消滅を起こし、エネルギーを生成するようになります
エネルギーはガス雲自体の重力に対抗して膨張しようとするため、ガス雲の重力と対消滅のエネルギーが釣り合い、そこでガス雲の収縮が止まります
この状態にあり、対消滅でエネルギーを生成して輝く天体が「ダークスター」です
ダークスターの中心部は、核融合が始まって恒星となるほどの密度に達していません
ダークマターの正体次第では、初期宇宙においてガス雲が恒星になる前に、ダークスターとなって安定するのです
ダークスターは最初は太陽程度の大きさから始まり、通常の恒星より遥かに巨大なサイズにまで成長していったとされています
ダークスター内に含まれるダークマター粒子が少なくなり、対消滅が起こらなくなると、最後は自身の重力で潰れて短期間だけ核融合で輝く恒星となり、最終的には巨大なブラックホールを形成すると考えられています
○通常の恒星と様々な性質の比較
ダークスターの性質をよりよく知るために、様々な性質を恒星と比較してみましょう
どちらの天体も自らエネルギーを生み出して輝きますが、そのエネルギーを生み出すメカニズムは恒星の場合星中心部で起こる核融合反応ですが、ダークスターは星全体で起こるダークマター粒子同士の衝突による対消滅です
また恒星は核融合によって生じるエネルギーで、ダークスターは対消滅によって生じるエネルギーで、それぞれ自身の重力とつり合うことで天体としての形状を保つことができます
また天体に含まれる物質の組成について、恒星はほとんど水素とヘリウムですが、実はダークスターもほとんど水素とヘリウムから成るとされています
ただしダークスターの場合、質量全体の0.1%未満の割合でダークマターが含まれており、その全体としては少量のダークマターが燃料となり、ダークスターが輝きを放つようになります
そして質量について、恒星は既知の中で最大のものでも太陽の300倍程度ですが、ダークスターは太陽の百万倍以上になることもあります
また直径について、恒星の場合は最大で太陽の2000倍程度もありますが、ダークスターはさらに巨大だった可能性があるとのことです
そして中でも特筆すべきなのは明るさで、恒星は最大でも太陽の800万倍程度なのに対し、ダークスターは太陽の100億倍以上に相当する明るさで輝いていた可能性があるとのことです
この明るさは、恒星が億単位で集まった銀河全体の明るさに相当します
これほど明るいからこそ、JWSTが発見した遠方の銀河がダークスターの候補となるのです
●なぜダークスターが存在すると仮定するのか
遠方の天体を銀河ではなく、わざわざイレギュラーなダークスターである可能性を検討するからには、これらの天体がダークスターである場合に得られるいくつかのメリットが存在します
まず、ダークマターの正体や性質が掴めるかもしれません
仮にダークマターの正体が「自身と対消滅を起こす未知の素粒子」だった場合に限り、初期宇宙にのみダークスターが存在する可能性がでてくるのでした
逆にダークスターを発見したとなれば、ダークマターの正体が、そのような性質を持つ未知の素粒子であると理解することができます
さらに、宇宙の初期段階から超大質量ブラックホールが存在している謎を説明できるかもしれません
ブラックホールの成長速度には、理論的に説明可能な限界の速度がありますが、遠方の宇宙の実際の探査の結果、それらの速度限界を超えるペースで成長したブラックホールが実際に見つかっています
そのような巨大ブラックホールの成長の謎も、ダークスターの存在により解明できる可能性があります
ダークスターは巨大な質量がまとまった天体であり、それが自身の重力で崩壊したとき、巨大なブラックホールが形成されます
これは効率よく巨大なブラックホールを生成する良いメカニズムです
ただしJWSTが発見した天体がダークスターだと確定するには、さらに詳細で正確な観測が必要であるとされています
最強の性能を持ったJWSTの超深宇宙探査から今後も目が離せません
https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2305762120
https://www.inverse.com/science/supermassive-dark-stars-jwst-early-universe
https://www.eurekalert.org/news-releases/995502
https://www.astronomy.com/science/dark-stars-come-into-the-light/
サムネイルCredit:N.R.Fuller, National Science Foundation
(宇宙ヤバイchキャベチの記事で作りました)
理論から仮定された天体「ダークスター」・・・
これが発見されたかも…と注目あれている
はたして!?
ちなみにあのブラックホールも天才・アインシュタインの一般相対性理論などで予言され、その後、発見された
別冊 ゼロからわかる宇宙論 改訂第2版 (ニュートン別冊) ムック
宇宙の成り立ちなどを説明する宇宙論・・・
その宇宙論を最初からわかりやすく解説
科学の進歩などで多くの謎が解明され、宇宙論も新たな改訂なども
2023年09月17日
月面に新たなクレーター、ロシア探査機衝突で形成か NASA
米航空宇宙局(NASA)は、8月にロシアの探査機が月面に衝突した時にできたとみられる新たなクレーターを発見した
ロシアの無人月探査機「ルナ25号」は、成功すれば史上初めて月の南極近くに軟着陸する探査機となるはずだった
月探査の再開に同国から大きな期待を寄せられていたが、8月19日に月面に衝突した
クレーターを発見したのは、2009年に月軌道に投入されたNASAの月周回探査衛星「ルナ・リコネサンス・オービター」
NASAは探査機が衝突したとみられる現場について、前後の画像を比較した
使用したのは、ルナ・リコネサンス・オービターが撮影した衝突「前」を示す2022年6月の画像と、2023年8月24日の画像
新たなクレーターの直径は約10メートルで、ルナ25号の着陸予定地点から約400キロ離れている
NASAは「新たなクレーターは、ルナ25号が衝突したとみられる地点に近く、ルナ・リコネサンス・オービターチームは、自然にできたものではなく、ルナ25号の衝突でできたものである可能性が高いと結論付けている」と説明している
ロシアと対照的にインドは8月23日、月探査機「チャンドラヤーン3号」の月の南極付近への着陸に成功。現在、ローバー(探査車)「プラギャン」を使用した探査を続けている
(この記事は、JIJI.comの記事で作りました)
(by AFP)
月面の新たなクレーターはロシア探査機が衝突してできたものだったようです
この後、インドが月面着陸に成功しています
世界はなぜ月をめざすのか (ブルーバックス) 新書
アポロ計画が終了してから40年以上・・・
ふたたび世界は月をめざしている
世界が月に注目し目指しているのはなぜかを分かりやすく解説・説明
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