地球外生命は存在するのか?
この究極ともいえる問いを「原始生命の発生確率」そして「最新の宇宙研究の成果」をもとに考察していく話題の新刊『宇宙になぜ、生命があるのか』
本書では、宇宙物理学者である著者が、有機物からRNA、DNAの合成、そして原始生命の誕生について考えながら、138億年のわれわれの宇宙において、現在考えられているさまざまな理論をもとに、それが「奇跡」だったのかを検証していきます
今回は、この本の中から、地球の生命が、なぜか「左巻き」のアミノ酸を用いている不思議を紹介します。
※本記事は『宇宙になぜ、生命があるのか』を一部再編集の上、お送りいたします。
地球生命はなぜかみんな「左利き」・・・
ここで生物中のタンパク質とDNAの特筆すべき、そしてとても不思議な性質についてふれておこう
タンパク質を構成するアミノ酸の立体構造は、それを鏡に映したものとは重ならない
このような分子を光学異性体と呼び、互いに鏡像となっている2種類の分子をD型、L型と呼んで区別する
ちなみにLは「左巻き」という意味であるが、では右巻きを意味するのはなぜRではなくDなのか、と気になる人もいるかもしれない
これはdextro-(右)、levo-(左)というギリシャ語の接頭語が用いられているためである
生命はなぜ「L型のアミノ酸」使うのか?・・・
両者の化学的性質はまったく同じであり、実験室で人工的にこのような分子をつくると、DとLがほぼ同数生じる
だが、地球生命のすべての種はことごとく、なぜかL型のアミノ酸のみを体内で用いているのである
そしてそのタンパク質の設計図であるDNAを構成するヌクレオチドの糖の部分もまた光学異性体になっていて、こちらは、地球生命ではもっぱらD型が用いられている
なぜこんな不思議なことになっているのか、これまでにさまざまな研究が行われているが、さっぱりわかっていない
そしてこれは最初の地球生命がどのように誕生したかという謎に、密接にかかわっていると思われる
右巻き・左巻きの起源?・・・
自然界において非生物的に有機分子が作られるような場所やプロセスはそれなりにある
だがほとんどの場合、そうした有機分子は右巻きと左巻きと同じ量だけ生成される
そのような環境で、どうやって右巻き、あるいは左巻きだけの分子だけが選ばれ、集まり、原始生命となったのか
まことに不思議である
若干の左右非対称性が非生物的に生まれる場合も知られている
例えば、銀河系の星間空間には恒星からの光が飛び交っているが、それらは塵粒子に散乱されるなどの過程で「偏光」という現象を起こす
光もまた、右巻きと左巻きの二成分があり、多くの場合、両者がほぼ同じだけ混じっているのであるが、そのバランスが崩れるのが偏光である
この偏光した光をエネルギー源として宇宙空間で有機物が作られる場合、光の左右非対称性を反映して、有機物の左右対称性も崩れることが知られている
ただし、ほとんど100%右巻き(あるいは左巻き)の分子を生成するというようなものではなく、せいぜい、どちらかが数%ほど多い、というレベルである
この問題から見える「生命の起源」という大きな謎・・・
現在のところ、完全に右巻き、あるいは左巻きのみの分子を用いている生命の非対称性に対する満足な説明は皆無である
左右非対称の起源はやはり、有機分子が組み立てられて最初の生命となるプロセスにこそ隠されているように思える
この問題は生命の起源における最大の難問を象徴しているといえよう
それはつまり、生命がどこで生まれたかとか、材料の有機物がどこで作られたかではなく、むしろ、単純な有機分子がどのように結合し、組み立てられて、複雑な遺伝情報を獲得し、自己複製する生命に発展していったのか、ということである
(この記事は、現代ビジネスの記事で作りました)
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